Tuesday, 31 March 2026

神奈川県警とノルマ主義

神奈川県警の相次ぐ不祥事が話題になっている。ストーカー被害の届けを軽視し、女性が殺害された事件は記憶に新しい。今月はパトカーの取り締まりが問題だったと、交通反則金34百万円が返還される異常事態が起きた。その他にも警察官の窃盗、詐欺、セクハラ、暴力団との共謀などが相次ぎ、全く飽きれる限りである。

これらの背景には、安易な成果主義があるらしい。例えば国から貰える「交通安全対策特別交付金」は、反則切符の枚数で決まるという。だから挙って検挙するようだが、取り締まられる方は溜まったものではない。

かく言う私も、その被害者の一人である。昨年暮れに大磯の海を見に行った時だった。高速を降りて暫くすると、後ろパトカーが「車を止めろ」という。何だろうと思っていると、お巡りが下りてきて「インターを出た処で一時停止しなかった」という。止まらずに交差点に入る事は絶対ない自信があったので、「証拠を見せてくれ」と頼んでも「内部情報は出せない」と頑張る。暫く押し問答が続いた挙句、「7000円の罰金切符を切ります。これ払えば済みますから・・・」と言って去っていった。

直ぐにその場で注意されるなら未だしも、5分も走って車が止め易い駐車場まで来た処で尋問されるのも気に入らなかった。きっと彼らは同じことを繰り返しているに違いない。長年の維持して来たゴールド免許が消えるのも悔しいし、何より署のノルマ達成の犠牲になったのに腹が立った。いつもは無縁の警察官だが、この時ばかりは権力に立ち向かう学生のような気持になったのである。

Wednesday, 25 March 2026

悪夢の裏銀座ルート

先日、久しぶりに長野の大町市を訪れた。春とは言っても、北アルプスはまだ雪で覆われていた。その壮大な景色を眺めながら、在りし日のことを思い出した。

あれは30代半ばだったか、その北アルプスの裏銀座に挑戦した時だった。金曜日の夜行電車で行こうとしていた処、急用が入って出発は土曜の朝になった。その半日の遅れが、後で大きな致命傷になった。


裏銀座ルートは大町から垂直に烏帽子岳に登り、野口五郎岳、水晶岳を通り三俣蓮華、双六を経て槍ヶ岳を目指すルートである。一度烏帽子まで登れば、後は尾根伝えの比較的平坦な道が続くと思っていた。ところが双六を過ぎた辺りで陽が暮れ始めた。おまけに疲労が足に来て、一歩進んでは休むという最悪の状況になってきた。

遠くに槍ヶ岳山荘の明かりが見えるのに、ちっとも前に進まない。そして気が付くと野猿の群れが現れ、じっと此方を見ているではないか!今から思えばどうやって山小屋には辿り着いたか思い出せないが、その恐怖と不安で頭の毛が白くなってしまった。

思えば1泊二日か2泊三日のコースだった。若気の至りとは言え、無茶をしてしまった。大町市の小高い丘に登ると、烏帽子岳しか見えなかったが、40年近く前の事がまるで昨日のよう蘇って来た。

Sunday, 22 March 2026

禁酒とヒジャブの国

今話題のイランとはどんな国なのだろう?行った事もないし、唯一出逢ったイラン人はいい印象がなかった。テレビに映るのは何故か男だけ、皆髭を蓄えて目つきが鋭い。でもテニスのアンドレ・アガシは好人物だし、日本で活躍するサヘル・ローズも美しい女性だ。

そんな国を少しでも知りたく、都内にあるペルシャレストランに行ってみた。「営業中」の看板が出ているのに鍵が掛かっていた。ガチャガチャやっていると主人が中から開けてくれたが、店内は昼だというのに暗かった。まさか此処までミサイルが飛んでくるはずもないが、警戒心を感じた。

料理は定番のケバブと豆の煮込みを頼んだ。どちらも塩辛いので、ワインが必要だった。折角なのでイランワインと思っていたら、レバノン産しかない。考えてみれば禁酒の国だから、酒なんてあるはずもなかった。

アルコールだけでなく、イスラム文化は女性に厳しそうだ。ヒジャブで顔を隠さなくてはならないし、結婚も親が決める気がする。昔読んだジェフリー・アーチャーの小説で、英国人と結婚しようとしたインド人女性が、父親に射殺される件を思い出した。

でもこうした風習は、生活の知恵から来ているのかも知れない。豚肉を食べないのは疫病から身を守る為とか、アルコールも灼熱の気候と関係してたり、女性の縛りも良からぬ欲望を生まないとか・・・、いつか識者に聞いてみたい。

Thursday, 19 March 2026

ベネゼイラのWBC優勝

 ワールドベースボールでベネゼイラが優勝した。それもアメリカに競り勝った。ベネゼイラはこの1月、大統領がアメリカに拘束されたばかりである。今回のイランもそうだが、一国のトップが他国に浚われたり殺されたりすれば、誰しも反米感情が生まれる。選手もファンも、その不思議な力を授かったのかも知れない。

ヒトは大きな逆境に直面すると覚醒する。

フレデリックフォーサイスの短編「The Emperor (帝王)」は、それを物語る代表作である。普段は地味な銀行員で、奥さんの尻に轢かれる男がいた。彼はある時誘われ一本釣りの漁に出ると、死闘の末500㎏を超えるカジキを釣り上げた。港に帰って来ると、「銀行なんて、マダムなんて糞くらえ!」と、正に「海の男」になっていたのである。

ジョン・トーランドの「バルジ大作戦」もある。ヨーロッパ戦線末期に、バルジ(突出部分)に取り残された米兵の心境である。普段は贅沢で自尊心が強い兵士が、冬の寒さと支援が途絶えた中で戦い抜いた。著者は「恐るべき戦士に仕上げられた」と言っていたが、死を乗り越えるとヒトは変わるのであった。舞台になったアルデンヌの森にも足を運んだので、身近に感じている。

尤も覚醒も良からぬ方向に走るきっかけになる。太平洋戦争を始めた日本人もそうだったが、追い詰められた生存本能は時として暴走する。今回もイラン人がこれからどう出るか?とても気になる。

Tuesday, 17 March 2026

部屋にいる象

オーストラリアのワインには変わったネーミングが多い。その一つが「Elephant in The Room(部屋にいる象)」である。名前は「どっしりとして香りも良く繊細さがある、だから放っておけない味」から来ている。値段も手ごろだし、確かにコクがあって美味しい。


ところが最近、その「部屋にいる象」がパレスチナ問題で使われていたのを知った。パレスチナは戦後イスラエルが入植してから、どんどん領土を失い多くの難民を生んでいる。特にガザ侵攻は非人道的な出来事で、イスラエルに非難が集まった。

ただ欧米や日本もそうだが、遠い国の混乱として、見て見ぬ振りをしているのも事実である。そんな時に使う英語が「部屋にいる象」だった。言葉の由来は、「昔とある国の王様が部屋で象を飼っていたのに、周りの人は誰も咎める事が出来ず、何も言えなかった」のようだ。

そう言えば、今のトランプ大統領もそうかも知れない。独断と偏見に、周囲はイエスマンばかりになって誰も意見をしない。自由なアメリカで本当に不思議な現象である。巨象は虚像、正に裸の王様である。

余談だが、ベルギーのビールに「Delirium(デリリウム)=幻覚、せん妄」という凄い名前が付いたのがある。瓶のラベルにピンクの象が付いている。アルコール度が8.5%と高く、泥酔するとピンクの象が見えて来るの処に由来している。よくこんなネーミングが許されると思うが、昔は象がそれだけ身近だったのかも知れない。

Saturday, 14 March 2026

アメリカに眠る戦利品

九段に用事があった序に、久しぶりに靖国神社の遊就館に寄ってみた。以前は館内放送があって、出て来るとすっかり国粋主義者になったものだが、今は静かだった。

遊就館は日本で最大級の戦争博物館である。ただその展示品の少なさは寂しい限りである。例えば東条英機の眼鏡があったが、彼の軍刀はノーフォークのマッカーサー記念館にある。真珠湾攻撃の九軍神の写真であるが、捕虜になった酒巻大尉の写真は彼の乗っていた潜航艇と共に、テキサスのニミッツ提督の故郷に飾っている。

飛行機もそうだ。入り口には修復されたゼロ戦が置かれていたが、スミソニアン博物館には無傷のゼロ戦始め、紫電改、月光、飛龍、桜花、天山、晴嵐などが保存されている。

その他、寄せ書きの日章旗、軍刀といった小物に至っては、アメリカの東海岸に多数ある博物館やオーストラリア、シンガポールなどに分散している。そしてその横には、必ず天皇ヒロヒトが戦争の象徴として、ヒットラーと同格に描かれているのである。

日本は戦後(アメリカの占領地政策もあって)戦争をタブー視して来た。だから遺品や戦利品の返還努力をして来なかった。アメリカに行って初めて己の過去を知るのも困ったものである。そろそろ大体的な遊就館拡張事業を始めてもいいのではないか。

Tuesday, 10 March 2026

イラン革命防衛隊のスパイ?

アメリカとイスラエルがイランの指導者を殺害、イランは中東各国の施設を攻撃し報復が始まった。原油価格は60ドルから倍に跳ね上がり、株価も大きく下落した。6万円になろうかとしていた日経平均も、昨日は5万円を割りそうになってきた。

日本にいるとそんなおカネの心配ばかりが募るが、ユダヤ人とイラン人の関係を身近に感じるのがオーストラリアであった。何年か前にシドニーにあるホロコースト博物館を訪れた事があった。オーストラリアには10万人程のユダヤ教徒が住んでいるが、そんな人たちを保護するにしてはやや大掛かりな施設であった。

2024年にそのユダヤ人のレストランやシナゴーグが、たて続きに襲撃される事件が起きた。犯行の黒幕が(ニュースでよく出て来る)イラン革命防衛隊(IRGC)だった。その為2025年8月にイラン大使は国外退去になり、大使館も閉鎖される事態に発展した。

実はそれに先立つ2025年1~2月、パース郊外のフリマントルに長期滞在した時だった。アパートの隣に住む男が、夜になると長時間電話する声が壁越しに聞こえてきた。その声はコーランのように抑揚がなく、中国人の話し方に似てとても攻撃的で気持ち悪かった。初めは別れた奥さんとの口論位に思っていたが、明け方まで続く電話に中々寝付かれなくなると何か別のモノを感じた。

(家主に聞くと)男はイラン人で石油会社に勤める嘱託だという。何度か「静かにしてくれ」と注意したが、翌日も同じ事が繰り返された。そのやり取りが今回のアメリカ・イラン交渉に似ていて、ノラリクラリ取り合わないアラブ風なのであった。アメリカが痺れを切らしたのも分かる気がした。

それから数カ月して国交が断絶した時期を思うと、彼はIRGCのスパイだったかも知れない?

一方のユダヤ人だが、昨年12月にシドニー近郊のビーチで発砲事件があり、15人が死亡40人以上が負傷した。犯人はISの影響を受けたパキスタン系の親子だったが、改めて反ユダヤ感情が根深い事が伺えた。

昨日もオーストラリアで、イランの女子サッカー選手数人が亡命した。アメリカの要請があったようだが、中東の混乱はまだまだ続く。

Friday, 6 March 2026

清潔な日本のトイレ

オーストラリアの人と話していると、日本に行った人の多さに驚く。「先週スキーに行って来た!」とか「来週から大阪に食べに行く!」とか、訪日の国別ランキングでも7位に入っている。勿論数の上では韓国や中国の比ではないが、年間100万人にも上る。

その人達が口を揃えて言うのが、「日本は清潔で安全な国だ」である。特に掃除の行き届いた街並みに感心するようで、中でも公衆トイレの清潔さはウォシュレット効果もあって好評である。

それを物語るのが、映画「パーフェクト・デイズ」である。役所広司演じる都のトイレ清掃員の話である。実はこの作品もネットフリックスで観たというオーストラリア人から聞いて知った。最初は「えっ?トイレ掃除の映画?」と訝ったが、日本が大きな信頼を得ている源泉と分かってから気持ちが変わった。

日本人の清潔好きは今に始まった事ではない。昔読んだ「ペリー提督、日本遠征記」にも、インド洋から中国を経て琉球に入った時の印象が綴られていた。ペリーは「琉球ほど清潔な国を見た事がない。一片のゴミや塵を見る事もなく、中国のあらゆる都市の汚さとは非常に異なっている」と語っていた。

日本の良さを外国の人に教えられ、初めて気付く事は多い。浮世絵やミシュランの高尾山などがいい例だが、今回も自慢できるものが一つ増えた。

Sunday, 1 March 2026

子供のメンタルヘルス

Op shopの多さと共に、目に付いたのがメンタルヘルスであった。最初は「病んでいる人が多いのかな?」位に思ったが、そう言えば以前お世話になったブリスベンの家にも、カウンセラーが来ていたのを思い出した。

そのお宅は郊外に建つ一軒家で、英国から渡って来た50歳代のご主人と奥さん、そして一人息子の3人暮らしだった。ご主人は三回目の結婚で、前の奥さんとの間に生まれた子供も成人し、やはりブリスベンに住んでいた。奥さんも2度目の結婚、その子は前夫との間に生まれた子供だった。

ただ男の子は一日中家にいて、曲にならないバイオリンを弾いていた。何か変だなと思ったが、暫くして不登校だと分かった。週末になるとカウンセラーがやって来て、3人で何やら話し合っていたのが印象的だった。

帰国して調べてみたら、16〜24歳のZ世代と呼ばれる若者の4人に1人は精神疾患を持っている事が分かった。また2人に1人は潜在的なトラウマ体験を持っているいう。コロナの影響や学校のイジメもあるが、原因は親の経済状況、中でも住宅ローンの不安が断トツだった。

例えばこの国の平均所得10万ドルの人が、100万ドルの家を買ったとする。ローンを8掛けの80万ドルで組むと、オーストラリアの金利は7%と高いので、毎年の金利負担だけで5.6万ドルにもなる。つまり年収の50%以上が利払いになり、さらにそれに元本が加わるのであった。滞在中も金利が上がるニュースで大騒ぎになった理由も頷けた。


年々増え続ける人口に不動産の供給が追い付かない。だから価格は上がる一方で、元々リバレッジの高いお国柄もあり、困窮の構図が見えて来た。親が生活費に困ると家庭内の雰囲気も悪くなる。子供のメンタルヘルス費にも影響し、益々悪循環に入って行くのであった。

もう一つの不安に気候変動による環境問題がある。オーストラリアらしい話だが、昨今の日常化する森林火災や洪水は正に生存に直結していた。それを子供は敏感に感じていた。

そして万国共通のSNSが煽る不安もある。昨年末から16歳未満の子供のSNS利用が禁止された。世界初であるが、その背景にはSNSで子供が自殺した親の強い働きかけもあった。そうは言っても、ゴルフで一緒に廻った親子の15歳の少年は、ショットする時以外ずっとスマホを見ていた。お父さんに「禁止されたんじゃないの?」と聞くと、「ソシアルメディアはね」とまだまだ改善の余地は多いようだ。

その他地元のゴルフ倶楽部ハウスでは、認知症の人たちのケアー活動が行われていたし、ビーチを歩けばスタッフが付き添う精神患者もいたし、全豪オープンのショップも患者らしき人が訓練を兼ねて売り子をしていたり・・・、一見明るくて豊かに見えても、実は色々悩み事も多いのだった。