Tuesday 19 March 2024

バトルオブセックス

大谷選手の結婚で連日盛り上がっている。お似合いのカップルで誰しもが祝福しているのが伝わってくる。しかも新天地で、今後10年間のスタートに相応しいタイミングだった。

 ニュースではその大谷夫妻が韓国入りし、ドジャースのオーナー達との懇親会に出た写真が公開された。驚いたのは、夫妻が挨拶していたのはテニスのビリー・ジーン・キング(Billie Jean King)だった。何故彼女がこんな処にいるのだろう?そう思って調べてみたら、何とドジャースの共同経営者になっていた。

ロサンジェルス・ロジャーズの株主はヘルメットにも書いてあるグッゲンハイム(Guggenheim Baseball Management) であるが、その株主の一人がキング夫人であった。他にもマジック・ジョンソンなど富豪が入っている。

 キング夫人は60-80年代に活躍したテニス選手で、グランドスラムのタイトルを39も持つ女傑である。記憶に新しいのは1973年に行われた往年の男子選手ボビー・リッグスとの余興試合である。男女対抗戦(Battle of the Sexes)と呼ばれ、5セットマッチで行われたその一戦は、30歳の彼女が55歳のリックスにストレート勝した。折しも男女同権運動の最中、それを契機に女子テニスの賞金が男子並みに引き上げられたのだった。

 彼女はレズビアンを公言している。相手はイレーナ・クロスという女性だが、彼女もやはりドジャースの株主に名を連ねていた。そんな影響からか、ドジャースはLGBT night と称するLGBT者向けの特別企画もやっている。 グッゲンハイムはユダヤ財閥だし、大谷選手を通じてアメリカの多様なダイナミズムに触れるのであった。

Thursday 14 March 2024

WCMの時代

来週は日銀会合がある。長らく続いた金融緩和もそろそろ終わりに近づいている。春闘の賃上げが大企業では上手く行っているようだが問題は中小だ。末端まで行き渡って初めてその準備が整う。何とか種火に火がついて欲しいと願っているが、日銀のかじ取りが気になる。

今の若い人は低金利の時代が長いから、金利には余り関心がないのかも知れない。ただ金利が上がってくると、個人資産や企業収益に直結するので見方も変わるだろう。昔は如何に金利の低いカネを調達して高金利で運用するか、金利には敏感でこのテーマの研修も多かった。

 思い出すのはWCM(運転資本マネージメント)である。運転資本は売上債権や在庫と仕入債務の差額である。当時のビジネススクールで流行った手法らしく、この+が大きければ資金余剰に繋がった。

中でも注目されたのが、負債で大きな部分を占める買掛金だった。買掛金の回転期間を長くして回転率を下げれば、その分手元資金の運用に多く廻せた。勿論取引慣習や仕入れ先の事情もあるが、これは未払金も同じであった。仕入先にどう交渉するか、結論はそう簡単に出るものではなかったが。

逆に売掛金は、回収期間を短くし回転率を上げればいい。その分手元資金が多くなり、金利収入が増える。販売先に毎日担当者が日参するとか、それも美人なら相手も軟化するかも?など、冗談も交えて真面目に議論した日が懐かしい。

Tuesday 12 March 2024

罰金と国際指名手配

先日、オーストラリアの市役所から封筒が届いた。何か嫌な予感がしたが案の定、罰金の請求書が入っていた。夕方に買い物に行った際、路上駐車したのがいけなかったようだ。10分ちょっと止めただけなのに、300ドル(3万円)も請求された。地球の裏側まで追ってくる役所仕事に、何か国際指名手配されたような気分になった。

ネットで調べると、詫び状を出せば許して貰えたケースもあると知った。早速「悪うございました!二度とこのような事はしません!」と長々手紙を認めて出したが、果たして結果はどうなる事やら。

 旅をしていると車に掛かるトラブルは付き物だ。随分前だがロンドンで、車に戻ると車輪にロック装置が付いていた。警察で罰金を払い、パトカーに同乗しロックを外してもらったが、半日が台無しになってしまった。 

 クロアチアでは止めていたはずの車が無くなっていた。近くにいたタクシーの運転手に聞くと、レッカー車で持って行かれたという。レッカー場所はタクシーの運転手が知っていたので、郊外まで高いタクシー代を払って取りに行った。罰金も高かったし、まさか「レッカー会社とタクシー運転手がグル?」かと思える出来事だった。

幸い大きな事故はないが、バックしてきた車に当てられた事があった。ブルガリアの田舎町で、相手は老人だった。その日はこらから空港に向かう処で、本来なら警察を呼んで事故証明を取る処をすっかり忘れてしまった。幸い相手の運転免許書や現場の写真を沢山撮ったので、保険で全額カバーされ事なきを得た。

 処でその車保険だが、レンタカーを借りると結構な額になる。だから運転マナーがいいオーストラリアではあえて掛けない事にしている。「万が一の時は大丈夫?」と友人に聞かれるが、今の処無傷で済んでいる。

Monday 4 March 2024

持ち株会で1億円

日経平均が遂に4万円を超えた。昨年末頃から予感がしていたが、今の相場は勢いが違う。これからも未だ上がり続けるのだろうか?それともバブルが弾けるのだろうか?素人には分かりようもないが、気になって仕方ない。

先日三菱商事のOBに会ったら、会社には「持ち株で1億円の社員」が続出しているという。持ち株会に入り、例えば毎月3万円を25年間積み立てると、投資累計額は9百万円になる。同社の平均株価は600〜900円程度だったので、少ない人でも累計の株数は1万株を超えている。今の株価は分割前で1万円なので、時価は少なくても1億円という計算である。

 商社株はバフェット氏が動いた昨年の夏ごろから急騰し始めた。あの時買っていれば!と後悔しても始まらないが、全く羨ましい限りである。普通の人が1億円の株資産なんて!何か落ち着かなくなってきた

 このタイミングで出版された清原達郎氏の「わが投資術」も、気になったので早速読んでみた。所得番付1位にもなった伝説のディーラーが、引退を契機に手法と哲学を開陳したという。「小型株のショート(空売り)」なんてとても真似できるものではないが、修羅場を生きた人の文章は張りがあって面白かった。(最後の)日本株の楽観シナリオも気になった。

Saturday 2 March 2024

真綿のウクライナ避難民

ウクライナが侵略され2年が経つ。最初の頃は毎日伝えられる戦況に戦々恐々としていた。ただ最近では長引く戦争に、戦争疲れというか厭世気分が漂っている。アメリカの支援予算は滞ってきたし、最大の避難民受け入れ国であるポーランドで、国境を閉めたと聞くと猶更である。

以前から気になっていたが、遠く離れた日本にいると今一ピンと来ないもの事実である。ウクライナに行った事もないし、ウクライナ人とも話したことがないのも大きい。これでは遺憾と、三鷹にウクライナ避難民がやっているカフェがあると知って行ってみた。

それは昨年開業したという小さなレストラン&キャフェだった。入るといかにも素人と思われるウクライナ女性が2人で切り盛りしていた。メニューはハッシュドポテトに似たジャガイモや、豆腐ハンバーグのような郷土料理で軽食だった。

ワインも店に置いてあったのは数本で、ボトルで頼むとあまりそういう客はいないらしく驚かれた。 壁にウクライナの地図が掛かっていて、「あっ!ここがドネツク州、ここがワインのオデッサ!」と、日頃のニュースの世界と重ね合わせた。

日本へのウクライナ避難民は2000人強という。国に夫や家族を残して女手ひとつでこうして自活するのは大変だ。飲食業だから中には変な客もいるかも知れない。そんな心配を他所に、片言の日本語で頑張っていた彼女たちの姿が正に真綿に包まれていた。

Sunday 25 February 2024

「部屋の象」ワイン

オーストラリアは農産国である。チーズ、ミルク、ヨーグルトなどの乳製品はビックリする新鮮さである。普段は飲まないオレンジジュースも病みつきになる。そしてワインである。

例えば日本のスーパーでもよく見かける「黄色い尻尾(Yellow Tail)」というテーブルワインがある。本場でも日本と殆ど同じ価格で売っていたが、味は破格に美味しかった。「これって別物?」とも思ったが、ワインは揺れに弱いからその理由も頷けた。

特にラベルのユニークさは世界一である。フランスだと醸造所や産地・年代など規制が厳しから、ラベルを見るとグレードが直ぐ分かる画一性がある。オーストラリアはそれが緩いのか、勝手なネーミングで遊び心満載であった。

そのいい例が、先般書いた「19人の犯罪者(19 Crimes)である。19人(19種類)の犯罪者の顔写真は正に圧巻であった。また先のYellow Tailも、カンガルーをイラストしたいかにもオーストラリアらしい一品であった。三種類あってオーストラリアはShirazの産地とはいうが、個人的にはシャルドネ・ソ―ヴィニョンが気に入っている。
「パブロとペドロ(Pablo&Pedro)」というコミカルなワインもある。ラベルには「スペインの情熱に敬意を込めて」と書いてあったが、典型的なブレンド品である。パブロは小柄だ口煩い元気者、一方ペドロは大柄で大人しくエレガント、この二人(二つの味)が一緒になったのがこのワインという。中々旨い表現だと笑ってしまったが、10ドル(1000円)程で美味かった。

もう一つ、「部屋の象(Elephant in the Room)」もあった。オークとスモーキーな香りは、部屋に象がいる匂いだという意味である。もう少し違う表現方法はないのだろうか?とも思ってしまうが、生産者の気持ちが伝わってきた。

Saturday 24 February 2024

オットーという男

高齢化の時代とは言え、長生きすればお金も掛かるし身体も弱くなる。特に伴侶に先立たれたり、病を抱えながら生きるのは大変だ。随分前だが親戚の叔父さんが亡くなった。80歳前半だったか、奥さんが亡くなるとまるで後追いするかのように逝ってしまった。昔気質の人だったので奥さんにも随分と威張っていたが、嘘のような最後だった。

そんな事を思い出しのは、昨年公開された映画「オットーという男(A Man Called Otto)」だった。トム・ハンクス演じる老人が愛妻に先立たれて、そのショックで何度か自殺を試みるが、危ない処で近所の人に助けられる話である。トム・ハンクスでなかったらとても観られたものではなかったかも知れないが、やけに共感を誘われた。 

 もう一つ、昔の小説「白い犬とワルツ(To Dance With A White Dog)」も、これを契機に読み直してみた。物語はオットーと同じで、奥さんに先立たれて孤独になる老人の話である。ただオットーの元に現れたのが猫だったのに対し、此方は犬だった。普段は目にも止まらない捨て猫や捨て犬だが、いざという時には孤独を癒す伴侶になるのであった。 

 処でこうした孤独は、都会生活と深い関係があるとかねがね思っている。リースマンの「群衆の孤独」ではないが、人は他人に囲まれた都会で孤独感を感じる一方で、自然の中ではそれがないからだ。確かに山を歩いていると、心細いが寂しいとは思わない。 

 都会は近くにスーパーや病院があって便利だが、その便利さが逆に曲者である。定年を契機に群馬の田舎に移ったOさんは、自給自足用の畑仕事や水の汲み出しが日課である。冬の寒さに備えて薪を仕込むの大変だ。薪はあっと言う間に燃えてしまうが、チェーンで切って乾燥させ斧を入れる作業は、膨大な時間と体力が要る。ただその自然と営むルーチンに、生存本能が刺激されるという。