Saturday 27 April 2024

別れた後に泣く男

先日とある居酒屋に入ると、面白い張り紙が目に入った。曰く「別れる前に泣く女、別れた後に泣く男」であった。中々の名言だと思っていると、隣り合わせた年配の客も頷いていた。

その店は3人の中年女性がキリ揉みしていた。忙しそうだったので訳は聞けなかったが、ひょっとして別れた男の未練を尻目に店を始めたのだろうか?

 確かに女は別れた男を忘れられる生き物と聞くし、一方で男はメソメソと過去から抜け出せない。「今昔物語」の中に、死んだ妻が忘れられず挙句の果て墓まで掘り起こす話がある。流石に男は変わり果てた妻の遺骸を見て発狂してしまうのだが・・・。

 若い人だけでなく、長年付き添った夫婦もそうだ。爺さんが先に死ぬと、婆さんは積年の呪縛から解放されて元気になるという。反対に婆さんが先に死ぬと、爺さんは一人で生きて行けないから後追いするかのように逝ってしまう。

しかこれは日本人の話で外人は少し違うようだ。シドニー・シェルダンの「Memory Of Midnight」は女が失踪した初恋の男を探し出し、彼が他の女と結婚していたのにそれを引き裂いて自分のモノにする話であった。流石西洋の女は逞しい!と変に感心したが、男も男で次への切り替えも早いし、やはり狩猟民族はちょっと違う気がする。

Friday 19 April 2024

オッペンハイマー

話題の映画「オッペンハイマー(Oppenheimer)」を観に行った。広島や長崎の惨状が出て来るのかと構えたが、物理学者の半生を追った淡々とした作品だった。3時間に渡る長編は少し退屈だった。それにしても、何故こんな映画公開を日本で躊躇したのだろうか?

昔「テレマーク要塞(The Heroes of Telemark)」というやはり原爆をテーマにした映画もあった。カーク・ダグラス演じる学者がドイツの重水工場を破壊するアクションもので、次元は違うが個人的には此方の方が面白かった。 

 映画ではアインシュタインも出て来た。科学者の純粋な研究は、軍事利用された時点で彼らの手から離れていく宿命には共感した。アルフレッド・ノーベルのダイナマイトもそうだが、研究者の手が血に染まる感覚も伝わった。

それにしてもアメリカのマンハッタン計画の規模、人材に改めて驚かされた。こんな国相手に日本はよく戦争をしたものだ。

 処でその原子力爆弾は広島と長崎に落された後、3発目を新潟に落とす計画だったという。しかしそれを運んでいた巡洋艦インディアナポリスが、日本の潜水艦から発進した回天によって撃沈され中止された。これは伊藤正徳の「連合艦隊の最後」に出て来る話だが、ひょんな出来事で惨事が回避されていた。

Monday 15 April 2024

就職ランキング

4月は人生のスタートの時期、取り分け社会人になる若者にとっては格別だろう。 

先日、日経新聞を見ていたら就職人気ランキングが載っていて、1位は何とあのニトリだった。「お値段以上のニトリ」は業績が創業以来右肩上がりとは聞いていたが、随分と時代は変わったと思った。ただ一方で東洋経済のランキングでは10位にも入っていなかった。

その東洋経済で1位になったのが伊藤忠商事であった。こちらも最近の業績が買われたのだろうか?処が就職難易度ランキングなる指標では伊藤忠商事は12位と、3位の三菱商事、4位の住友商事、7位の三井物産の後塵を拝していた。 

 これはどう云う事なのだろう?集計方法も然る事ながら、幅広い学生を対象としていたのが日経や東洋経済だったという事なのだろうか?

最近では学校入試のような就活偏差値も出て来た。最高の偏差値69は、国際協力銀行や日銀に並んで三井不動産と三菱地所であった。地味な不動産開発会社に入るのがそんなに難しいとは意外だった。ひょっとして採用人数の少なさが評価されたのだろうか? 

 分からない事ばかりだが、昔に比べて銀行、損保など金融関係の人気が下がった気がする。学生時代からベンチャーを準備する学生や外資に行く人も増ているようだし、相変わらず公務員の人気も根強いと聞く。ランキングは世相を反映しているから、学生でなくても気になる。

Saturday 13 April 2024

グッドジョブ!

岸田首相がホワイトハウスを訪れ、国賓としてのスピーチを行った。ジョークを交えて笑いを誘い、大変受けたと好評だった。有名なシナリオライターもいたようだが、所々に故郷広島の話も交えた岸田色も出ていた。前回の安倍さんのスピーチも良かったが、今回もまずまずでホッとした。

ただ一つ気になった事がある、それは終わってからバイデン大統領が言った「グッドジョブ!」だった。その場に居合わせた訳ではないし、英語の使い方にも不慣れだが、何か上から目線で馬鹿にされたような気分になった。例えばもし立場が反対で、バイデン大統領のスピーチに首相が同じような表現を使うだろうか?

 昔ある外人と親しく話していた時、彼が第三者に対して私の事を「This guy」と言った。ある程度公式の場所だっただけに、その時もやはり軽く見られていたかと不快になった。彼はそれを察してすかさず言い直したので、やはり不味かったと思ったらしい。 

 普段は平静を装っていても、つい本音が出ると状況は一変する。戦後の日本人に慕われたマッカーサーだったが、ある時米国議会で「日本人は12歳の少年」と評して日本人の怒りを買ったのは有名な話である。マッカーサーは「日本の戦争が自衛だった」と擁護していただけに、理解者だと思っていたのが一気に吹っ飛んだ瞬間だった。

Monday 8 April 2024

Double or Quits

例の一件で、賭博にクレジットがある事を知った。普通は手持ちのカネがなくなった時点で終わりである。ただ負けてもクレジットして貰えれば賭博は続けられる。今回の4億ドルの負債もそんな仕組みから積み上がったようだが、これってやはり変だ。

カネを返せないと家族や親せきを巻き込み、命まで危なくなる。最悪の場合は自ら命を絶つ事もある。それは本人も然る事ながら、当然クレジット側の責任も問われ兼ねない。

ちょっと次元は違うが、ジェフリー・アーチャーの短編小説「Double or Quits(一か八か)」は、そんな賭博場の心配を逆手に取った話であった。

 大金をルーレットにつぎ込む男は、予め顔の知れたジャーナリストを呼んでおいた。彼は負け続けて最後のカネが尽きると、近くの海岸で拳銃自殺に出た。賭博場のオーナーは、その一部始終をジャーナリストに見られていたのを知っていた。オーナーは公表を恐れて、死んだ男のポケットに掛け金全額を忍び込ませた。勿論男の拳銃自殺は芝居で、彼は掛け金の回収に成功したのであった。 

ギャンブルは殆どやったことがないが、先日オーストラリアのゴルフ場にスロットマシーンがあったので試してみた。10ドル札を入れて何回か廻している内に30ドルが当たった。迷わすその場で引き揚げたのは言うまでもないが。

Friday 5 April 2024

通訳と影武者

大谷選手の通訳だった水原一平さんが解雇された。違法賭博に手を染め、多額の負債を大谷選手の口座から引き出したという。よく分からない点も多いが、二人三脚で来ただけにショックだった。

その通訳だが、サイマルのような専門家ならいざ知らず、素人が片手間でやると魔が差す事がある。最初は黒子に徹していても、段々面倒になってくるからだ。「俺は通訳なんかになった積りはない!」の気持ちも邪魔する。依頼主の考えが分かってくると、彼を差し置いて勝手に受け答えてしまうのである。

 その点、「一平さんは身の程を弁えている!」とずっと感心していた。多分上下関係がはっきりしていたので、出来る業かと思っていた。でも彼も人間だった。いつの間にか大谷選手の影武者になって、しかもカネにまで手を浸けていた。

 影武者と言えば、プーチンや金正恩の影武者を思い出す。プーチンの影武者は先日毒を盛られたと報道があった。役に立たなくなれば殺されるのが宿命である。そんな事が分かっているから夜もオチオチ眠れない。一平という人もどんな気持ちでやっていたのか、そう言えばあまり笑顔がなかった。

Saturday 23 March 2024

裏金と猫鞭の刑

3月は確定申告の季節である。真面目に納税している者からすると、自民党の裏金がどうして課税されないのか不思議でならない。受け取ったカネは明らかに雑所得である。金額も政治家も特定しているので、簡単だと思うのだが・・・。

その国税だが、昔「マルサの女」という映画があった。宮本信子演じる査察官が、死にそうな男の会社に架空融資を見つけたり、宗教団体の裏帳簿を発見する件はコミカルで面白かった。売り上げの過少申告もあった。彼女が遠くからカフェの様子を見ていたら、レジを全く打っていなかった事に気が付いた。

 ジェフリー・アーチャーの短編小説にも似たような手口が紹介されていた。「Cat O'Nine Tales(猫鞭の話)」の中に出て来る「Maestro」である。イタリアレストランのオーナーが脱税で捕まった。彼はテーブルクロスやナプキンの洗濯代を水増していた事が発覚した。査察官が実際にレストランに行って客の数を数え、クリーニング業者の伝票と突き合わせると、その3倍の量があったからだ。 

 脱税ではないが、やはり「Cat O'Nine Tales」の中に違法薬物を発見する話もあった。トラック運転手が頻繁にガソリンスタンドで給油するのを怪しんだ国境警察が、ガソリンタンクを叩くと各々違った音がして、大量の薬物が隠されているのを見つけた。

脱税は犯罪、犯罪者には猫鞭の刑、選挙も近いしどんな審判が下るのだろう。