Thursday, 23 March 2023

スキーの事故

スキーは楽しいが、危険も隣り合わせである。先日も乗鞍岳で雪崩があり、アメリカ人とオーストラリア人の男性が巻き込まれて死亡したり、スキーヤー同士の衝突は相変わらず多い。

今週「恋に落ちたシェークスピア」で有名なアメリカの女優、クウィネス・パルトロ―の裁判が話題になっている。

彼女は2016年にユタ州のスキー場で、当時59歳の男性と衝突した。その事故で男性は肋骨4本を折るなどの重傷を負った。男性は被害金額30万ドル超を求償しているが、一方彼女の方も「ぶつかって来たのは男性だ」と主張している。裁判の成り行きが気になるが、一瞬の事でどちらも滑っているとなると、中々白黒付けるのは難しい気がする。

かく言う私も、昔後ろから追突されてスパッツを破かれた事があった。ぶつかって来たのは女性だった。後ろからどん!と当たられ反動で転倒した。咄嗟に「大丈夫ですか?」と声を掛けたのは私の方だった。女性は「ハイ」と答えそのまま何も無かったかのように立ち去ってしまった。気が付くとエッジでスパッツがパックリ切られていたが、こうなってしまうともう後の祭りである。

ただこれはラッキーな方だ。知人の中にはその衝突が原因で膠原病になってた人もいる。外出するとフラフラするので、一生自宅生活を余儀なくされてしまったのは本当に気の毒である。

衝突は兎に角回避するに限る。そのためいつもキョロキョロ見回して滑っている。ただ最近はスノボーが主流になっているので、軌道を予測するのが中々難しい。シューという音が近づいてくると怖い事この上ない。

Friday, 17 March 2023

中国人に渡ったスキー場

随分前から中国人による不動産取得が問題になっている。北海道の原野から都心の不動産まで、先日は沖縄の無人島が話題になった。狭い日本を外国人が買い占めれば、日本が日本でなくなってしまう?そんな心配は後を尽きない。 

 そんな最中、恒例の春スキーで群馬県の某スキー場に行った時だった。不便な場所で訪れるスキーヤーの数も知れている穴場なのに、早朝から物凄い人が来ていて駐車場は一杯だった。後で分かったのだが、今年は早朝6時からの営業が始まっていたのだった。

春スキーは暖かく気持ちいいが、問題は重い雪である。処がそのスキー場は真夜中から圧雪車を入れ、まだ暖かくなる前の早朝に滑らす営業に切り替えたのであった。その為早朝のゲレンデは、真冬と変わらない素晴らしいコンディションになっていた。その準備にも脱帽するが、一体誰がこんなサービスを始めたのだろうか?

その経営転換を図ったのが最近買った中国人であった。 随分前から北海道のニセコや白馬など、オーストラリアや中国など海外から来るスキーヤーは多かった。無名のスキー場は無縁と思っていたが、遂にこんな所まで浸食される時代になってきたのだ。

問題は辺鄙な場所にどうやってスキーヤ―を呼び込むかである。その鍵は中国人スキーヤーの誘致と聞いて更に驚いた。 あと数年経つと本国からのツアー客に埋め尽くされるらしい。

その某スキー場は頂上までロープウェーで一挙に上がると、5Kmの斜面を一気に滑れる素晴らしいコースである。近くには温泉やゴルフ場もある。便利になるのは嬉しいが、少しずつ国富が無くなっていくのが気掛かりだ。

Monday, 13 March 2023

2つの銀行倒産

ウクライナでソ連が核でも使わない限り、株価の急落はないと思っていた。そんな矢先、 先週アメリカの銀行が二つ、たて続きに倒産した。 

一つはカリフォルニアのSilicon Valley Bank、もう一つはSilvergate Capitalである。特にSilicon Valley Bankは全米16位の資産を誇る大きな銀行だっただけに驚いている。FDIC(連邦預金保険公社)は25万ドルを上限に預金を保護すると言っているが、果たしてどうなることやら。

どちらの銀行も資金繰りが悪化した処に持ってきて、価格の下がった国債や社債を売却した事で損を膨らませたようだ。週明けの東京市場の株価は大きく下がり、特に銀行株の下げが目立っている。リーマンショックの時のように、負の連鎖にならなければ良いが心配である。 

 新たに日銀総裁になった植田氏は「金融緩和は継続する」と言っていた。ただ昨今の物価高や賃上げの機運からして、遠からずして日本の金融政策も転換期に入ったと思っていただけに、またその期待も分からなくなってしまった。

 暫くはこの連鎖の影響が気になる。

Wednesday, 8 March 2023

ジビエの季節

TVを点けると東出昌大さんが出ていた。久しぶりの登場で、山に籠って自給自足生活をしていた。不倫事件が相当堪えたのだろうか、人里離れた淫蕩生活にそのショックの大きさが伺えた。

食事は猟銃の免許を持っているので、近くの動物を仕留めて食べているという。その番組でも鹿を捌いてTVスタッフに振る舞っていた。父親が料理人なのでその血を引いたのかも知れない。

ところで冬はそのジビエの季節である。先日友人の知り合いで狩りを趣味にしている人がいて、戦利品を振る舞う会があった。場所は奥沢のこじんまりしたフランス料理のレストランだった。パリで修業したシェフが持ち込まれた鹿、カモ、イノシシを上手に料理して食べさせてくれた。 

ジビエと聞くとゲテモノ食いのイメージがあったが、意外と肉は柔らかく塩も効いて美味かった。特にカモの炭火焼きや鹿のパテは絶品だった。処が食べても食べても出て来るボリュウームに次第に胃が疲れてきた。仕留めたイノシシは人の身長もある大きさなので、肉の量も半端でなかった。 

 とても珍しい経験だったが、翌日は胃もたれで苦しんだ。東出さんは毎日こんな生活をしているのだろうか?奥さんは渡辺謙のお嬢さんだったか、もう許して復縁してくれないだろうか?

Monday, 6 March 2023

ノストラダムスの予言

先日、幸福の科学の大川隆法が亡くなった。彼は東大法学部卒の宗教家として90年代に脚光を浴びた。宗教は兎も角、彼を有名にしたのがノストラダムスの予言だった。五島勉の「ノストラダムスの大予言」がヒットした事もあり、一挙に有名になった。

その大予言はもう随分前に読んだので忘れたが、ヒットラーの出現やJFKの暗殺、太平洋地域の大地震など、今から思うと本当にノストラダムスの予言だったか怪しいが、読み物としては面白かった。

特に当時は世の中が1999年問題を控えていて、世紀末に何か起きるのか不安が漂っていた。そこに持ってきて「人類は滅亡する」と言われると、心を揺さぶられた人は多かったのではないだろうか。

 ちょうどそんな頃、フランスのプロヴァンス地方を旅した時だった。サロン・ド・プロヴァンス(Salon de Provance)という小さな村に入ると、村の中央にはノストラダムスの銅像が建っていた。彼の博物館まであり、この町で亡くなって祀っているのが分かった。突然のお対面に、架空の話が急に現実味を帯びたのであった。 

元々ノストラダムスは、アンリ2世が騎馬試合で死亡する事やフランソワ1世の死亡の予言が当たった事で注目されるようになったと聞いている。それを今風に膨らませた五島勉も凄かったが、その風に乗った大川さんは随分と得をした。 

あれから30年、月日の経つのは早い。

Saturday, 4 March 2023

少子化のメリット

昨年初めて出生者が80万人を割ったと話題になっている。政府も少子化は危機的状況になったという。ただ何を今更というのが実感だ。こんな事は随分前から分かっていた。 

 あれは確か2003年だったか、出生者と死亡者の数が逆転した時だった。その頃、日本の人口は20年で1000万人減少すると言われた。年にすると平均50万人である。50万人と言うと松山市や宇都宮市の人口に匹敵するから、毎年中堅都市が一つ一つ消えていくイメージだ。

最初は緩やかだった減少幅が昨年は79万人になった。これからが正念場だ。特に地方は大変だろう。都心に住んでいても新しい家への建て替えが急に増えているので良く分かる。年寄りが死んで家が売りに出され、代わりに若い人が入って来ている。

 それに対しアメリカは毎年200万人、オーストラリアは50万人の人口が増えている。200万人というと名古屋市の人口に匹敵するから大変な数である。それを支えているのは勿論移民である。オーストラリアは嘗て白豪主義を取っていたが、今では3割ほどがアジアなどの非白人になっている。取り分け中国系が多いのが目に付く。

今の現状が続けば「日本と言う国が無くなってしまう」という議論がある。確かに計算上はそうだが、家は広くなるし交通渋滞も緩和されるだろう。そもそも江戸時代は3000万人だった事を思うと、その揺り戻しがあってもおかしくない。その内必ず移民受け入れの話が出て来るだろうが、これにはあまり賛成できない。少子化のメリットをもっと考えたらどうだろう。

Friday, 3 March 2023

犬笛

競馬好きの人が読むと面白いと思ったのが、ディック・フランシスの競馬シリーズである。その一冊が「For Kicks(日本版は興奮)」である。物語はイギリス競馬会で穴馬が優勝する番狂わせが続いた処から始まる。当然薬物などの調査が入ったがその痕跡が掴めなかった。ただ調べて行くうちに意外なカラクリに辿り着くのであった。

それは「犬笛」であった。馬は火を恐れる習性がある。その心理を利用して厩舎で火炎放射器で火を見せ、その瞬間に犬笛を吹くのであった。その記憶を使って、馬が最終コーナーに差し掛かった時、ジョッキーは笛を吹くと馬は狂わんばかりに猛ダッシュする仕掛けだった。

作者は元全英のチャンピオンジョッキーだった。日本の武豊も文筆家になったら、結構いい小説が書けるかも知れない。

 処でその「犬笛」だが、どんなものかと取り寄せてみた。吹くとかなり甲高い音が出る。人間の耳にはいる音域はせいぜい20,000Hzだが、犬はその3〜5倍以上の高周波を捕らえるらしい。鼻ばかりかと思っていたら、意外な才能を今更ながら知った。 

早速我が家の愛犬に試してみた。確かに小さな音でも、それは口笛のようにキャッチして反応した。折角なのでこれから暖かくなる事もあり、庭で訓練してみる事にした。

Tuesday, 28 February 2023

虎の門事件とステッキ銃

安倍元首相の暗殺事件は、未だに海外でも大きな関心毎である。特に日本は銃が禁止されているだけに、不思議に思った人が多いのは確かだ。オーストラリアで泊めて貰った家の主人からも、「あれには驚いた」と「犯人の動機は何だったのか?」と聞かれた。「母親がカルトに入信して破産した恨みだった」と応えたが、日本は治安がいいと思っていただけにピンと来なかったようだ。 

というのも、暗殺の動機は多くが政治的なものだからだ。JFKのオズワルドは定かでないが、第一次大戦の引き金になったサラエボのオーストリア皇太子やリンカーン始め、日本の坂本龍馬や桜田門の井伊直弼、近年では社会党の浅沼委員長もそうだった。

ただ何となくその根底には、貧困と人生の歯車が狂った若者の葛藤が見えて来る。今読んでいる児島襄の大作「天皇」でも、その一例として大正時代の末期に皇太子を襲う虎の門事件が出て来る。山口出身の23歳の男が、大正12年に皇太子裕仁(後の昭和天皇)を虎ノ門で襲った事件であった。使われたのは実家から持ち出したステッキ銃であった。幸い皇太子に弾は当たらず取り押さえらえたが、その動機が関心を誘ったのである。

彼の実家は山口の名家で父は衆議院議員を務めていた。先のステッキ銃も、同郷の伊藤博文がロンドンで買い求めた逸品で、流れ流れて父が保有していたものだった。犯人の青年は四男だった事もあり、父から厳しい経済生活を余儀なくされ次第に反社会的な思想に傾倒していった。真坂それが大正の大事件を生む背景になった。一番驚いたのは父親で、事件の翌日には議員を辞職し以後ショックで部屋に籠り、半年あまりして餓死したという。

そう言えばオズワルドがJFKを狙った倉庫の窓や、オーストリア皇太子を撃ったプリンツィフというセルビア人が後に収容されていたプラハ郊外の収容所、桜田門事変の水戸藩士関鉄之助が最後に逗留した茨城の田舎などを訪れてみると、不思議と犯人と心境がシンクロしてしまうである。やった事は卑劣だが、その背後にもっと不条理な時代が見えて来るのであった。

Saturday, 25 February 2023

不味い海外食

久々に海外に出て感じるのは、食事が口に合わなくなってきた事である。若い頃、「長年海外に住んでいた人でも、歳を取ると日本に戻って来る」と聞かされた。理由は食である。歳を取ると不思議と現地の食が受け付けなるという。

今回のオーストラリア旅行でそれを強く感じた。定番のハンバーガーは殆どソースが付いていないのでパサパサして喉を通らなかった。むしろ安いマックやハングリージャックスの方がまだマシでジューシーだった。シーフードはフィッシュ&チップスに代表されるテンプラ風が主流である。ただこれも揚げた白身に塩とレモンを振り掛けるだけで淡泊だった。

そうなると残された選択肢はチャイニーズである。今回宿泊したのが郊外の住宅地だった事もありレストランが少なかった。その代わりテイクアウトの店は結構多く良く使ったが、プラスチックの容器で持ち帰るのはやはり味気がない。オーダーはいつも無難なシンガポールヌードルである。一人前の量が日本感覚の倍でかつ値段も高かった。 

ショッピングセンターには必ず巻き寿司のコーナーもある。一度試したが、これも作り置きの時間が長いせいかグニャグニャしていたし、やはり中国人の握る寿司は何か気持ち悪く以来二度と食べる気になれなかった。

かくして帰国すると醤油モノ、取り分けラーメンが急に食べたくなる!これは今に始まった事ではないが、特に今回その反動は大きかった。現地の食事が受け入れられないと旅も段々詰まらなくなる。そろそろ海外の旅も終わりに近づいて来たのかもしれない?ふとそう感じたのであった。

Thursday, 16 February 2023

シドニィ・シェルダン

暫く前に旧友のK君に会った時、「何か面白い本はないかな?」と聞くと「古いけどシドニィ・シェルダンがいい」と教えてくれた。昔英語学習で使われた「ゲームの達人」は読んだ記憶はあるが、そうかと思って早速「Nothing Lasts Forever(日本版は「女医」)」から入ってみた。

原書でも英語は分かり易く、世界から愛される理由も分かった。物語は若手女医3人が病院であれこれ事件に巻き込まれる。最後はその一人が移って来たエリート医と深い中になるが、彼には金持ちとの縁談が舞い込んだため、邪魔になり殺されてしまうのであった。

読んでいて、次から次に運び込まれる患者に対し、24時間呼び出しが続く過酷な病院事情も伝わってきた。最近のコロナ禍で病院がひっ迫する話は聞いていたが、実態はこんな感じかと思った。

また 「そういう医者もいるかも知れないな?」と思ったのは、あだ名が007という医者だった。007は「殺しのライセンスを持った男」の意味で、彼の手に掛ると助かる患者までも死んでしまうと噂された。確かに新たな患者を受け入れるにはそのベットを空けなくてはならない。その現実に直面すると、ちょっとした医者の裁量もあり得るかも?と怖くなった。病院に辿り着くと安心するが、一方で病院の採算や医者、看護婦の勤務時間もあるから、そのバランスが崩れた時が問題である。

シドニィ・シェルダンの特徴の一つは妊娠である。昔読んだ復讐劇でも、政敵の娘を身篭らせる結末があったり、今回でもそれが男女の駆け引きに使われていた。

Monday, 13 February 2023

オーストラリアのゴルフ事情

 オーストラリアはゴルフ天国である。町から車でちょっと走れば沢山のコースが待っている。ゴルフクラブと称する処はレストランやカジノが付設していて、正に地域の社交場である。それに対しゴルフコースは文字通りゴルフだけである。やはり終わった後は冷たいビールが欲しいので、クラブの方がいい。

料金は高級クラブだと70ドル(6300円)程度するが、普通は30〜40ドル(2700〜3600円)と今の円安を考えても安い。私の場合手引きカートで歩くのを常としているが、電動カートを頼むと大体倍の値段になる。クラブのメンバーになると、年会費を(いい倶楽部でも)10万円程払えば毎日出来る。

スタートは空いていればいつでも出れる。ただ週末などはやはり予約が必要である。至って気軽なゴルフだが、日本のゴルフ場と違う点は幾つかある。例えばコース案内、次のティーが何処だか殆ど標識がないので初めは戸惑う。次第に慣れてくると獣道ではないが、不思議にそれが見えて来るが。

人々はとても陽気である。根っからゴルフライフを楽しんでいるのが良く分かる。仮に打ち込んでも「ごめんなさい」は言わない。日本だと怖いメンバーからクレームが出そうだが、それもお国柄なのだろう。ただ一組6-7人で周るのには参ってしまう。先日も一緒に回ったオーストラリア人に「どうして倶楽部は注意しないの?」と聞いたが、暫くしてそれが愚問だと分かった。

勿論ドレスコードもない。皆んなゴルフの格好でやって来て、駐車場で靴を履き替えるだけだ。ロッカーもシャワールームもない処が多い。一体「ゴルフは紳士のスポーツ」でジャケット着用の日本の仕来りは何処から来たのかと思ってしまう。

又OB杭が無い。その代わりにウォーターハザードが多い。だからボールが無くなってもペナルティーは一つで済む。距離はメーター表示なのでヤードに数え直している。距離はやはり長い。パー4で400ヤードを越える処はザラである。コースに屯しているカンガルーや野生の鳥を見るのは本当に楽しい。

Friday, 10 February 2023

日本車は大人気

 昔流行った若大将シリーズに「ニュージーランドの若大将」があった。加山雄三扮する日産の社員が、メルボルンで活躍する物語である。最後はNZのMtクックを滑り降りるシーンまであってまであって良く出来た作品だった。

その日本車だが、シェアはオーストラリアで50%を超えていると言う。中でも(自分も乗っていたが)トヨタハイラックスは断トツに多い。次いでカローラやマツダである。何故か若大将の日産は少ない。

そんなカローラ(当地ではヤリス)に乗ってゴルフ場に行くと、ゴルフ仲間から「これはいい車だ」と褒めてくれる。オーストラリア人にとって日本車は欠かせない生活の一部になっている。

そのオーストラリアのゴルフは至っては気軽である。クラブに着いて初めは「私は旅行者だけどプレイ出来ますか?」と慎重に切り込んだが、今では「予約してないけど回れるの?」と普通にやっている。

限られたクラブを除いて殆ど半パブリックである。それでも月曜日と火曜日はコンペをやっている所が多く断られ事もある。処が先日、受付の女性が「ちょっと待って、名前は何て言うの?入れてあげるわ!」と突然の配慮をしてくれた。

スタート時間に行くと、年配の大男3人が待っていて自己紹介するや否や直ぐにプレーが始まった。クラブメンバーの会だと言うのに、よそ者をよそ者と思わず受け入れる処がオーストラリアである。日本だったら「どうして参加出来たの?」なんて聞かれてそうなものだが、そんな野暮な事はない。先程のカローラを褒めてくれて人も、駐車場までカートで送ってくれ車談義が始まったのだった。

建国200年、考えればここでは誰しもが外来者である。その拘りがない風土は風通しが良く快適に感じる。

Wednesday, 8 February 2023

クロコダイルダンディー

 先日、オーストラリアのパースで少女がサメに喰われたニュースがあった。その事を地元の人と話すと、「だから海では泳がないんだ!」と言われた。確かにゴールドコーストでも、ブリスベン市内の内海のビーチでも泳いでいる人を見た事がない。精々膝辺りまで浸っている程度である。

サメだけでなく、オーストラリアは野生動物の宝庫である。有名なコアラは流石に保護されているが、カンガルーは人間と共存している。ゴルフ場に行くと、家族毎に大きな木の下で涼んで暮らしいるカンガルーに出会う。なるべくボールが当たらないように気を付けている。ゴルファーが近づくと親が立って警戒するにがいじらしい。

ビックリするのはウォータードラゴンと称するカメレオンみたいな爬虫類である。突然保護色で現れるとビックリするが、結構人懐っこく逃げる事はない。クラブのが人に話すと「ああジミーね」とペット化している。

鳥に至っては物凄い種類で到底名前を覚える気にもなれない。ただ白オームの群れは圧巻である。ギャーギャーと煩く100羽近くで群れを成していて、近づいても逃げない。

オーストラリアの人は床に落ちても構わず拾って食べるし、キッチンに蟻が歩いていたりハエが飛んでいても気にする事はない。裏庭に蛇が出ても驚かない。

昔クロコダイルダンディーと言う映画があった。自然と共存しているオーストラリア男が都会に出てきて珍事を繰り広げるドラマであった。今でも広大な大地の一角で、皆んなクロコダイルダンディーをやっている気がする。

Monday, 6 February 2023

ラーメンの値段

 先日TVを観ていたら、NYでラーメン一杯が3000円すると言っていた。本当かと思っていたら、久々にオーストラリアに来てその訳が良く分かった。

そのラーメンだが、中国人が作る現地ヌードルでも1500円はする。レストランで食べるスパゲッティやハンバーグは1800円と信じられない価格である。

3年間に来た時は、テイクアウトの中華が700円程だった。それから比べると倍以上値上がりしている事になる。日本の旅行者にとっては誠に厳しいの一語に尽きる。

ただ一方でそう変わらない物もある。それはゴルフ料である。何処でも大体30〜40ドルは昔のままだから、平均すると3年前だったら2500円、今でも3500円と充分許せる価格帯である。

ワインやジュースなどもそうだ。ビールもスーパーで6本入りのハイネッケンは2000円と、為替を考えても余り高くない。それでも新聞では酒税が上がるので、パブで飲むビールは安価なFour Xなら7ドルだが、近々12ドル時代が来ると言っていた。尤も旨いIPAなどもう1200円だから余り関係ないが、つまり食料品だけが突出して上がっているのであった。

この事をある時仲間で話した時、「我々が80年代に東南アジアに行った時そうだったね!」と言う事になった。いい思いもしたし、そのツケを今払っているのかもしれない。

それにしても時給は日本が1000円に対しオーストラリアは2000円になってしまった。2倍どころかドルベースだと3倍の格差である。若い人が可哀想だが、海外に出れば大きなチャンスが待っている。麺屋という市内のラーメン屋に入ったら日本人女性だけで錐揉みしていた。何と逞しいと思って感動した。

Saturday, 4 February 2023

豪州のマッカーサー

ブリスベンの市街地にマッカーサー記念館があるので行ってみた。ビルの8階にある小ぢんまりした展示だった。奥に彼が使っていた部屋もあり、革張りの椅子に座っては当時を思い浮かべた。

驚いた事にその一角に、山本五十六機の操縦桿があった。ブーゲンビル島上空で撃墜された後、どうやってここまで持って来たのだろうか?そのマッカーサーだが、数年前にノーフォークにある記念館を訪れて以来身近な人になっている。

太平洋戦争では英雄だったが、朝鮮戦争ではあと一歩と言う所で議会に梯子を外された。大統領の道が閉ざされ、戦後は一人息子が偉大な父から逃れる為に失踪したりした。薄い頭を意識して終始帽子を付けていた事など、人間性を感じる部分も多い。

ノーフォークの記念館には東條英機邸から没収した軍刀や、降伏文書のコピーも土産で売られていて中々興味深かった。ただブリスベンの方は退役軍人と思われる人が屯っているだけで、何もなかった。

そう言えば、第一生命本社のマッカーサールームもあった。昔仕事の関係で訪れた時、「もし宜しかったらお見せしましょうか?」と言うので、折角なので見せて頂いた。ブリスベン同様、此方も大きな机と革張りの椅子が置いてあった。

マッカーサーはもう過去の人である。記念館を訪れる人も疎だし、若い人は名前さえ知らない人が多いようだ。ブリスベンには開戦当時100万人もの米兵が駐留していて、彼はそのトップだった。今となっては強者どもの夢の跡である。

Friday, 20 January 2023

シシリーの田舎旅

そのコルレオーネ村に行く途中、陽が暮れて来たので宿を取る事にした。処が大きな町もなくそれらしき建物もない。ある村で歩いている人にホテル、オテル、ペンション・・など知る限りの言葉を並べてもちっとも通じない。その時ある人が「あの雑貨屋に行ったら?」と指さしてくれた。 

その店に入ると、これまた主人と言葉が通じない。困っていると「弟なら英語が分かるから待っていろ」と言う。暫くするとその弟がやって来て事情を話すと、「この村にはホテルはないが、ここの2階で良かったら泊めてやる」という。その晩は彼の厚意に甘えて泊めてもらったが、歩くたびに床が軋む古い家だった。

翌朝発とうとすると、昨日の弟がやってきて「村を案内してやる」と言う。折角なので彼の車に乗り、着いたのはオリーブ畑だった。彼の家はオリーブを営んでいた。瓶の中から作り立てのバージンオイルを試飲し、「どうだ旨いだろう!」と自慢する。やは現地で味わう作り立ては違う。

 その次に行ったのは村の教会だった。中に入ると沢山の骸骨が服を着て陳列されていた。どうやら村人が亡くなると、こうして葬るのが仕来りだったようだ。大人も居れば小さな棺には子供もいた。不思議と気味悪くなく、イタリアの古い田舎文化のに思えた。 

シシリー島はイタリアの中でも最も貧しい地域と言う。その貧困がマフィアを生んだのだが、至る所にギリシャの古跡が残り、ミシュランでも3つ星が8か所もある風光明媚な処である。シラクーサの町には映画カサブランカに出て来るようなアラブ人が屯ぎ、街道にはトラック運転手目当ての黒人娼婦が立っている。魚は新鮮だしワインも美味かった。出来ればもう一度行ってみたくなった。

Wednesday, 18 January 2023

シシリーマフィアの逮捕

先日、シシリーマフィアの大物マッテオ・メッシーナ・デナーロが逮捕された。30年の逃亡生活の末という。彼のボスだったサルバトーレ・リーナも24年の逃亡生活だったので、二人は同じ運命を辿った。

デナーロの罪状の一つが1993年5月のテロだった。以前読んだシルヴィオ・ピエルサンティの「イタリア・マフィア」にその事件が出ていた。ターゲットはTVのコメンテーターで、日頃からマフィアを風刺していた男だった。ローマで車が爆発し一人が死亡し30人以上の負傷者が出した。

シシリーマフィアに興味を持ったのは、10年ほど前にシシリー島を旅した時だった。映画ゴッドファーザーで有名なコルレオーネ村を訪ねたのが切っ掛けだった。ドン・コルレオーネを思い浮かべながら歩いていると、村人が全員マフィアに見えてきた。外に立っているのは殆ど男で、皆んな立派なスーツと革靴を履いていた。村の中央にキャフェがあったので思い切って入ってみた。一斉に視線が注がれたのが分かり、あわててコーヒーを飲むや否や退散した記憶がある。

ところでそのゴッドファーザーにも出て来るが、バチカンの汚職事件でロベルト・カルヴィ頭取が暗殺された件があった。ローマの橋から吊るされるシーンはショッキングで、そのスキャンダルを扱ったラリー・カーヴィンの「誰が頭取を殺したか(The Calvi Affair)」は最も面白い読み物の一つになっている。その殺害を指示したのが、今回のデナーロのボスだったリーナと分かり、過去と現在が繋がったのであった。

処でシシリー島の首都はパレルモである。先の本の中に「パレルモ住民の3/4はマフィアと何らかの関係者」と書かれていた。そんな事とは知らず、呑気にバールで飲んでいたかと思うと背筋が寒くなった。

Saturday, 14 January 2023

泉晴紀さんの流儀

車の中でラジオを聴いていたら、漫画家の泉晴紀さんが面白い事を言っていた。それは彼が若い頃、編集者に連れて行ってもらった体験だった。

編集者はお金がなかったので、近場の安居酒屋に行ったのだが、その前に銭湯に寄ってひと汗流したという。その何の事ない作法が、ビールを美味しくさせて驚いたという。以来彼はその流儀に嵌ってしまい、飲む前には近場で銭湯を探し清めるという習慣が出来たという。

泉晴紀さんは「孤独のグルメ」で知られる久住昌之さんとコンビを組んで、泉昌之のペンネームで活躍する人という。失礼ながらその放送を聞くまで存知えなかったが、話を聞いていると作品が生まれる理由も頷けた。

かくいう私もそれに似た工夫を施している。最近は家飲みが増えているが、飲む前に近くの公園を2~3Kmジョッギングする。大した運動量ではないが、帰ってシャワーを浴びて飲むビールの味が各段に違う。「空腹こそ最大のご馳走」と誰かが言っていたが、ちょっとした工夫で人生が豊かになる。

Thursday, 12 January 2023

東野圭吾の本

街を歩いていると、若い人の服装が気になる。男も女も同じような色彩で、地味で安っぽい。特に今時の女性でハイヒールを履く人は皆無で、ズックみたいな靴が一層貧祖に映る。これも彼是30年は続いているデフレが成せる業か、将又男女差の敷居が低くなりつつある社会現象か、昔を知る者にとっては嘆かわしいの一語である。

 そんな矢先、若い人に人気のある東野圭吾を始めて読んでみた。今まであえて読まなかったのは、大衆的で内向きな処が何か赤川次郎に似ていて、俺のジャンルではないと思っていたからだ。手にしたのは20年以上前に出た「秘密」であった。

物語は交通事故に遭った親子が入れ替わる話であった。生き残った娘は話してみると実は死んだはずの妻だったり、その稚拙な設定からして一体何が面白いのかさっぱり分からなかった。とても最後まで我慢出来ずに途中で止めてしまった。

 同じようなタッチは、百田尚樹の「プリズム」にもあった。此方も20年ほど前の作品だが、多重人格の男に人妻が惹かれる話であった。百田氏の歴史ものは歯切れが良くファンの一人だが、こういった陰湿的なタッチはあまり冴えがない。そもそも家庭教師で通い始めた家の、居候と懇意になるストーリーも気持ち悪かった。

 デフレが長引き所得が伸びないと、若い人の心が停滞するのもよく分かる。20歳代でデフレを体験し始めた人は、もう50歳代になっているから恐ろしい。加えてこの何年はコロナで他人との距離が広がっている。その閉塞感はもはや日常化していて、見ていて本当に気の毒だ。先程の小説が受けるのも、こうした社会を投影しているからだろう。

Thursday, 5 January 2023

パリは燃えているか?

NHKBSの「映像の世紀」はいい番組である。たまに見るが、これならNHKをぶっ壊さなくて良かったと思える制作である。時代と言う濁流に押し流されながら、人々が逞しく生き抜く姿にいつも感動させられている。その映像を引き立たせているのが、繰り返し流されるあの重厚な音楽である。

たまたま「街角ピアノ」を見ていたら、その曲の作者である加古隆さんが軽井沢の自宅で奏でておられた。緑が映える美しいアトリエと、重苦しいメロディーはアンマッチングであったが、それは糸が張り詰めたような緊張感があって素晴らしい光景だった。改めて大きな感動を呼ぶ芸術家の力も感じた。https://www.youtube.com/watch?v=e0o3-dUvC2Y 

 曲の名前は「パリは燃えているか?」である。ラリー・コリンズの同名の作品が映画化され、こちらのテーマソングは弦を弾いた軽快なテンポだった。どうしてあえて同じタイトルにしたのか、こればかりは本人に聞いてみないと分からない。また結局パリは燃えなかったのに、どこからあの悲惨さが来たのだろう? 

 余談だが、「パリは燃えているか?」の小説は緻密な描写がとてもリアルである。例えば米兵士がシテ島のキャフェを出た瞬間に撃たれた件や、ヌイイ市役所の階段を戦車が昇るシーン、ノートルダム寺院の前で戦車戦が行われるシーンなど、ドイツ軍本部のムーリスホテルも現在もそのままなので読者はいつでもタイムスリップ出来る。

映画では若い頃のアラン・ドロンやジャン・ポール・ベルモントが華を添えていた。パリを破壊から救ったコルティッシュ将軍に対する感謝の念も後を絶たない。