Monday 27 February 2017

華僑とドリアン

そのマレーシアだが、今日の繁栄を築いたのが中国人とインド人である。中国人は錫を、インド人はゴムを作るために連れて来られた。一方、現地のマレー人を伸ばしたのがブミプトラ政策だった。マハティールの進めたブミ優先の政策で、ゴルフで云えばマレー人がハンディを貰って社会に入る仕組みである。教育・雇用など、きめ細かな優先策を講じた結果、今ではその成果が目立つ。今回TVに登場している警察の人達に、何故かブミが多いのもそのせいだろうか?

そうは言っても経済を握るのはやはり中華系である。マレーシアばかりでなく、アジアの華僑ネットワークは大きい。だからこそ、逆のハンディを負って生きているのも事実で、気使いも人並みではない。友人のTさんもその一人だ。Tさんは勿論英語が達者で、豊富な話題でいつでも人を笑わせる才能がある。例えば、ある金持ちの武勇伝の話をした後に、「でも私にはお金がないけど・・」という落ちが必ず付く。その間合いが何とも親近感を疎そうのである。

その西洋ナイズされたTさんが、ある時ドリアンの美味い処があるというので連れて行ってくれた事がある。ドリアンは高価で美味だが、物凄い匂いのする果物である。チーズのようにお腹の中で発酵するから、絶対にビールと混ぜてはいけないと言われている。そんなドリアンばかりの屋台が並ぶ市内の一角で、採りたてをご馳走してくれた。その地元に溶け込んでいる姿を見て、変に安心した記憶がある。

Sunday 26 February 2017

30年前のマレーシア

金正男の暗殺事件で、連日クアラルンプール(KL)からの報道が続いている。事件のあった空港は随分前に出来たが、成田とは比較できない程モダンである。中東から4時間程で来れる地の利もあり、黒いベールに身を身を包んだ人も多い。市内の巨大なショッピングセンターで買い物して帰って行く。

ただマレーシアはイスラム国だから、日本人にとっては刺激がない分、物足り無さが付き纏う。歓楽街も少なくTVも面白くない。定年後に日本から移住する夫婦が多いのは、「夫が現地で変な気にならないので、奥さんが安心して過ごせる」というのが理由らしい。街並みも人臭さがなく、暫く前に出来た新都市のペトラジャヤ(Petrajaya)はその典型だ。KL郊外に霞が関をそのまま移転した官庁都市であるが、無味乾燥とした雰囲気はあまり気持ちいいものではない。昨年訪れたルーマニアの首都ブカレストの街並みが、何故かそれに似ていた。

そんなKLだが、今から30年程前はモノレールもペトロナスタワーもなく、英国統治の面影が多く残っていて良かった。当時の最高級ホテルだったシャングリアの前に、ちょうどマクドナルド1号店が開店した頃だった。良く整理された道路と街路樹が調和し、暑さを凌いで寺院に入ると、石の床から伝わってくる冷気が快かった。お気に入りは市内の中心にあるセランゴールクラブである。ウィンブルドンのような生芝のテニスコートでプレーでき、それは優雅な社交場だった。あの頃が懐かしい。

Thursday 23 February 2017

揺れる東芝で

東芝が大きく揺れている。暫く前に、海外の損失が5000億円だ7000億円だと言われていたので改めてバランスシートを見てみた。すると資本が3000億円しかないと知って驚いた。それから暫くして、やっぱり前年度末は債務超過だったと報じられた。

三洋電機、シャープと来て今度は東芝と、日本の製造業が次から次におかしくなっていくのは偶然なのだろうか?それにしても、危機はある時突然やってくるから怖い。特に従業員は堪ったものではない。稼げ稼げと言われ続けて真面目に仕事をしてきたのに、桁違いの損失を聞かされても戸惑うばかりだ。

知り合いのSさんもその一人だ。Sさんは加えて持株会の株価が気になっている。かつては1000円を超えた株価も、最近では200円を切って来た。よく100円を切ると本当に危ないと言われているので、いつ手放そうかと考え始めたという。そうは言っても会社への忠誠心もあるので、簡単には踏み切れない。その葛藤が毎日の生活を余計不安にしている。

Monday 20 February 2017

二ッシュの収容所

バルカン半島のマンガがあると聞いて読んでみた。坂口尚の「石の花」全五巻であった。20年前に出版され作者は既に亡くなっているが、それにしても良く出来ている。ストーリーは第二次大戦下のユーゴスラビアである。ナチの侵攻で国を二分する内戦が起きる。作者は手塚おさむ氏の弟子だと書いてあったので、そう言えば「アドルフに告げ!」に感じが似ている。

物語の中に、ニッシュの収容所長という人物が出て来る。二ッシュ(Nis)は昨年の旅で訪れた町だったので目に止まった。今ではコソボに近いセルビアの都市になっているが、かつてはローマの皇帝を3人も輩出した古都であった。そこにナチが収容所を作り、今でも保存されている。2階建ての建物で収容所としては初期のものだ。ユダヤ人が多かった街だったこともあり、35,000人の住民の内10,000人がここで処刑されたという。一部屋に50~150人が詰め込まれ藁の上で寝ていたと係りの人が説明してくれた。それを再現した暗い部屋に佇むと、どこからか声が聞こえてくるようで怖かった。

町にはオスマン軍がやって来た時、セルビア人の首を壁に埋め込んだ「ドクロの塔(Skull Tower)」もある。どちらもまるで昨日の事のような、時間を感じさせないリアルさがある。

Saturday 18 February 2017

韓国の恨文化

今週の話題は、何と言っても金正男が暗殺されたことだろう。ただでさえも時代錯誤の北朝鮮、それもマレーシアの国際空港で毒針、インドネシアの女とかまるで映画に出て来るような設定である。それにしても世襲の跡継ぎの抗争は凄いものがある。

その韓国だが、とある本に韓国人の恨(ハン)文化が紹介されていた。永年抑圧された人が持つ無常観のことらしいが、今の慰安婦問題もそこに行く着くらしい。歴代の大統領が引きずり降ろされたり、有史以来王朝の墓が代が代わると破壊されるなど、中々根は深いようだ。こうしたスクラップ&ビルドが続くと、当然いつまで経ってもストックが蓄積されない。その繰り返しはこれからも続いて行くのだろうか?

朴大統領を見て最初はとても親近感があった。それはソウルの食堂のおばさんの雰囲気があったからだ。たかが親しい友人を近くに置いたくらいで、どうしてそんなに非難されるのだろうか?と今でも思う。昔韓国と仕事をしていた頃、サムソンや現代の人達とも良く付き合った。とても知的でいい人達だったが、親しくなって飲むと「日本には負けないぞ!」と感極まって泣き出す人もいたのには参った。近くて遠い国の韓国、もうそろそろ恨まなくてもいいのに・・・、そんな気持ちになってくる。

Wednesday 15 February 2017

湯島天神の寒梅

まだ寒い中、湯島の寒梅を見に行った。今はビルの谷間にある湯島天神だが、受験の神様だけあって多くの参拝者が来ていた。

山のようにぶら下るお札には、日本中からのXX大学合格祈願の願いが書かれていた。大学だけでなく、看護学校や高校など、その半分は「第一志望に合格しますよう!」という親の願いであった。改めて父母の気持ちが伝わり、そのパワーというか気を感じた。そして賽銭を投げ込み、ご利益と家内安全を祈願し山を下りた。

ちょうど5時になっていたか、飲み屋が開く時刻であった。ふと目をやると、老舗の「シンスケ」の前で数人が並んでいた。まだ店が開かないのに酒を待つ人の気心が知れないと思いながら、折角ここまできたのならと列に並んだ。そして運よく開店と共に暖簾を潜れる幸運に授かった。品書きはどれも控えめに酒を意識した控え目の計らいである。熱燗の両関に鯛の刺身で暖を取る。

Sunday 12 February 2017

貿易収支のカラクリ

そのFRBが政府でないとどうなるんだろうか?トランプ大統領がメキシコや対日赤字の解消を訴えているが、それは本当にアメリカの国益になるのだろうか?その疑問を再考してみた。

例えばトヨタが儲かって黒字になり、GMの車が売れずに赤字になる。それは大きな問題だが、ところが国ベースではどうなるのだろうか?アメリカは貿易赤字になるから米国国債を発行しそれを補填しようとする。一方日本は貿易黒字になるから、増えたお金は外貨準備に組み入れられ、米国国債を買うことになる。つまり貿易収支とは、米国国債を通じた債権債務の関係である。では赤字になると、本当にアメリカは損するのだろうか?

アメリカ政府は発行した国債をFRBに売るので現金が入り、日本は元々円貨だからその円をアメリカの銀行に売ってドルに替え、そのドルでFRBから米国国債を買う・・・両国の政府はFRBを通じた国債の売買で収支を調整する。その結果、FRBの株主であるチェースマンハッタン銀行やゴールドマンザックスは、売買で2度美味しい収益を得る事になる。それも両国の黒字と赤字が大きければ大きい程、その儲けも大きいというものだ。そう考えると、強ち貿易赤字も悪くない気がする。

Friday 10 February 2017

民間が所有するFRB

近頃まで、日銀は国の銀行だと思っていた。通貨の番人と中立性で、時の政府から独立した金融を司ると教えられてきた。しかし政府の持ち分は65%で、残りは誰が持っているのかよく分からない。上場しているから誰でも3百万円程出せば株は買えるが、それにしても多くは誰が持っているのだろう。

そんな中、20年以上前に出た、ユータス・マリンズ著「民間が所有する中央銀行(原題:The Secrets of the Federal Reserve )」を読むと、益々怪しい世界が見えて来る。あのFRBの話だが、株主は純粋な民間銀行で政府ではない。その発足もジキル島で秘密裡に練られたというから、正にミステリー風である。読んでいて、限られたファミリーの名前が繰り返し出て来る。その登場人物の多さに中々付いてはいけないが、大統領、イングランド銀行も絡んだ株式の持ち合いは凄い世界である。時々アメリカやヨーロッパでとてつもない金持ちがいるが、きっとこうした関係者なのだろう。

それにしても、20世紀の初めにこの制度を考えた人たちはとても頭がいいと感心した。単なる紙をおカネとして刷り、政府と人々に貸して金利を取る。今でからこそ当たり前の仕組みだが、黙っていても胴元が潤う仕組みである。それから100年以上が経ち、その信用創造は益々肥大化している。時々、世の中は何か大きな力で動いているように感じることがあるが、その一つがこのシステムなのかも知れない。

Tuesday 7 February 2017

アラブの王様

今週の産経新聞に兼高かおるさんの連載が出ている。兼高さんと云えば「世界の旅」の人だったが、彼女も88歳になっていたかと思うと時の流れを感じた。活躍した当時は1960年代で、まだ外国に行くのが難しい時代だった。それを上品な日本語と、ナレーションを務めた芥川さんとの掛け合いで、上手く世界を紹介する心地良い番組だった

回顧録には多くのVIPから貰ったプレゼントの話が紹介されていた。太平洋の島やアラブの油田から、サウジの王様からは「子供を授けよう」と言われたこともあったという。彼女はインド人と日本人が混じったエキゾチックな風貌だったから、さぞかし人気があったようだ

そんな中、昔の仕事仲間が集まった会で面白い話があった。それはいつもある事だが、「XXさんはどうしているかな?」みたいな話で盛り上がった時だった。誰かが「あのTさんはアラブの王様に嫁いだらしいよ!」と言う。Tさんと云う女性は、昔から年の割にはやけに色っぽく、OLとは思えない一癖二癖ある雰囲気があった。普段何を考えているのか分からず、上司に対しても男と女の関係で捉える凄い性癖があった。そんなTさんだったので変に納得してしまったが、それでも暫く経って厳しいハーレムの世界だけに色々と考えてしまった。

Sunday 5 February 2017

オーストラリア人のスキー

スキー場に行くとオーストラリアから来た人が多い。西洋人と思えば、まずオーストラリアの人だ。野沢温泉の居酒屋でもそうだったが、白馬ではここは外国か?と思われる専用バーがあったのには驚いた。飲み代を倹約しているのかも知れないが、我々みたいにガブガブ飲まず、一杯を大事に飲んでいたのが印象的だった。

この冬は妙高に行ったが、やはりオーストラリアの一行が目立った。地元の人に聞くと大体2週間は滞在するという。妙高だけでなく、隣の赤倉や斑尾などを滑って楽しむらしい。その優雅なバカンスを、リフトで隣り合わせた若い人に聞いてみた。「そんなに休みを取って大丈夫なの?」 すると「その代わり、冬は殆ど休みを取らない」と言う。それを聞いて少し安心した。

オーストラリアは今夏の真っ盛りである。気候のいい季節からわざわざ寒い国に行く心理がやはり理解出来ない。またオーストラリア人は晴れている日より、雪が降っている日に滑るのが好きだともいう。本当かと思って先の人に聞いてみるとその通りで、「明後日は天候が崩れるから楽しみだ」みたいな事を言っていた。どうやらオーストラリアのスキー場は、いつも(人工スノーで)晴れているから、新雪を滑るの機会があまりないようだ。改めてお国柄に違いを感じだ。

Thursday 2 February 2017

残業時間の話


電通事件をきっかけに、残業時間の見直しが一気に出てきた。電通の鬼10則ではないが、サービス残業が当たり前だった時代に育ったので、今更という感じがしている。昔は土曜も働いたし、仕事が終わって皆で飲みに行くのも仕事の内だった。それが出来ないと、会社で生きていけないのは周知の事実だ。

確かに休みなく働くと頭がおかしくなる。随分前だが、1年程殆ど休みなく働いた時があった。A社とB社から2つの仕事をもらい、同時並行で熟した。夜はコンビニの弁当を食べから机に戻り最終電車で帰る。週末も自宅で朝から夜中まで、出張に行っても電車の中でパソコンを叩いた。次第に目の周りは隈が出来、頭も急に白くなった。半年経ったころだったか、A社のレポートをB社に、B社のレポートをA社に送ってしまうポカをしてしまった。今から考えれば頭が思考停止になっていた。

日本の労働時間がドイツなどと比べて多いのは、かねがね製品の少量多品種が原因だと思っている。大会社は他社との差別化のために独自のスペックを要求する。逆に世界は大量少品種の規格品が中心である。世界で戦うにはこれではやっていけないが、日本の国内市場がとても大きいから、それがまかり通っているのだろう。早く帰れ!と号令を掛けても、こうした構造的な問題を解決しなければ元の木阿弥になる。

Wednesday 1 February 2017

トランプの演出

トランプ大統領が就任早々、矢継ぎ早の大統領令を出している。選挙公約とはいえ、そのドラスティックな演出に世界中が振り回されている。今日は円安批判があり早速為替が動いたり、一昨日の入国制限では株価が急落した。明日は何が出るのだろう。

シリア、リビアを初めとする7カ国の入国制限で、空港で右往左往する人達を見ていると、映画「ターミナル(Terminal)」を思い出した。トム・ハンクス演じる旅行者が、アメリカ出国時に自国でクーデター起きパスポートが失効する。それから空港で生活を始めるが、次第にそこで働く人達と稀有な人間関係が生まれてくる。今回も空港で足止めを食らった人は多いだろうが、そんなドラマが世界で生まれている。


ある人が、「トランプは偽善に対する挑戦だ」みたいな事を言っていた。今の世の中は綺麗ごとが横行し、本当は本音で喧嘩したいのに、中々そうさせてくれないイライラが横行している・・・、その不満を上手く代弁している。いつまでもこんな元気が続く訳ないから、その内一転して収束に出る気もする。戦争を始める人と終わらせる人、不良債権を作る人と処理する人など、気が付くと同じ人だったりすることは良くある。