Wednesday 30 November 2011

全ては時が語る

”自分だけが知っている秘密が、時間と共に明るみになって行く” そんな怖い思いは誰しもしたくはないだろう。ジェフリー・アーチャーの新作、「全ては時が語る(Only Time Will Tell)」はハラハラする小説で面白かった。

舞台は第2次大戦前のイギリス、父を亡くした少年が成長し、自分の知られざる過去と出会うストーリーだ。例によってイギリスの階級社会と血縁を巡る仕掛けが良く出来ている。少年は小さい時に父を亡くしたため、ホテルに勤める母一人で育てられる。貧しい家庭のせいで、裕福な友人の父親からは距離を置かれる、そんな設定で物語は始まる。比較的早い段階で読者には秘密を教えておき、段々とその核心に迫っていく手法は流石だ。

ジェフリー・アーチャーといえば、「百万ドルを取り返せ(Not a Penny More, Not a Penny Less)」の華麗な復讐劇が何と言っても最高だ。「ケインとアベル(Kane and Abel)」も交錯する人間関係が見事だった。今回はこの交錯型で、続編が来春出版されるというので楽しみだ。

Tuesday 29 November 2011

オーエンの理想郷

今週、世界的な食品メーカーであるネスレ(Nestle)が、アフリカで児童労働の疑惑があると報道された。場所はコートジボアールのココア工場であった。コートジボアールでは、世界のココアの35%を生産しており、5‐17歳の子供180万人がそれに携わり、その40%は未就学という。学校にも通っていない子供が作ったココアの味は、想像しただけで気味が悪い。

この児童労働、先に紹介した小説「ミレニアム」の中でも出てきた。スウェーデンの仔会社が、ベトナムで子供を働かせた事実が明るみになり、トップが更迭される。長編小説の最後を締める部分で、この問題の大きさが浮き彫りになっている。

先般スコットランドを旅した際に、グラスゴーにある「ニュー・ラナーク(New Lanark)」に立ち寄った。産業革命の最中、ロバート・オーエン(Robert Owen)が作った紡績工場、住居、学校が一体となった理想郷である。それまで労働を課していた子供に、初めて教育の機会が与えられた場所である。今では世界遺産に指定され、入り口には「若い人への教育が施されれば、不正や圧政への抵抗が育ち、引いては戦争を防げる」と書いてあった。こうした崇高な発想は中々日本人にないだけに、つくづく感心した。

Monday 28 November 2011

ルーマニアのジプシー

先日、BBCの特集でルーマニアのジプシーが紹介された。所謂ジプシーと呼ばれるロマは、国内だけでも数にして2百万人は居るという。国の人口が20百万人なので10%に相当する。ジプシーと云えば、家がなく常に移動を続ける民族だ。オペラのカルメンのような踊り子もいるかと思えば、定職がないためスリ、物乞いが多い。

有名なのはパリの乞食である。路上で物乞いしている女性は殆どこのルーマニア出身のジプシーと云われる。多くは薬で寝かした赤ん坊を抱いているが、生きているのか死んでいるのか分からない。また少年も多い。新聞紙をかざしながら寄ってきて、新聞を見ている隙に下から出した手で金を取る手口である。
ルーマニアは最近観光に力を入れている。作曲家ジョルジュ・エネスク(George Enescu)や豊かな自然を売りにしている。手付かずの郷愁を感じるので、一度行ってみたい国の一つだ。ただパブ仲間で首都ブカレストに駐在した人によると、暫く前まで「外国人の食糧がないので、大使館が本国から取り寄せていた」と、生活環境は中々厳しいのようだ。それでなくても、ルーマニアは怖い印象がある。古くはドラキュラ伯爵、攻め入るトルコ軍の兵士を串刺しにして路上に林立した話や、その後の吸血鬼のイメージもある。また少し前ではチャウシスクの独裁、体操のコマネチも被害者になった。

ユーロ危機とイタリア

今週イタリアの新首相マリオ・モンチが、独仏首脳とストラスブルグで会った。イタリアが経済破綻すれば、おそらくユーロは終わりだろう、そんな危機感が伝わってきた。

それにしてもユーロは難しい仕組みだ、とつくづく思う。昔イタリアリアの頃、リラが弱いと旅行者はここぞとばかり沢山買い物をしてお金を落としてくれた。ただユーロになってからその為替の恩恵も無くなり、代わりに増税、雇用カットなど上から押し付けが取って代わった。国民としても何か腑に落ちないのも無理はない。そして今回は国債を買えという。

今更だが、イタリアは未だにとても古い体質の国だ。街並みは元より人々もそうだ。先日イタリアに行った友人が、3つ星ホテルに泊まったのに英語放送はないし、インターネットも有料で驚いていた。暖房が入らずお湯も出ないと苦情を言うと、やって来たのが食堂のおばさんだったり、台所事情は大変らしい。夜のレストランは、相変わらず8時にならないと開かない。おしゃれにはお金をかけ、ネクタイ・スーツ文化は健在だ。ユーロの存続は、この人たちに懸かっている。

Wednesday 23 November 2011

冬眠モードに入る

冬の日はどんよりとして短い。夕方は3時半を過ぎると暗くなり、朝も明けるのは9時頃なので、一日の4分の3は夜である。外は寒いが、家の中は床暖房が効いてとても暖かい。食事が済んで本でも読んでいるとウトウトしてくる、そのまま翌朝まで寝入ってしまうことも多い。先日ある人から、「貴方も冬眠モードに入ったね」と言われた。冬眠するのは、へびやクマばかりと思っていたが、人間にもある云う。

若い頃、欧米人と一緒にいると体力の違いを実感した。長い会議を居眠りもしないで延々話し続けるし、深酒しても翌朝はケロッとしている。やはり体が大きいと違うな、と感心したものだ。しかし良く考えればどちらも同じ人間だ、そんなはずはないと思って分かったのが、彼らの夏休みである。悠に1か月は休みと取り、殆どの人が滞在型でエネルギーを蓄える。日本人のように、あちこち飛び回ることはない。そして冬もこうして、睡眠時間を多く取りエネルギーを蓄えているようだ。

ただ睡眠の弊害もある。ある本に、日照時間が少ない地域では、体内時計が狂って過眠になる傾向があると書いてあった。過眠は、別名で”冬季うつ病”と聞いて少々怖くなった。

冬のインドアテニス

当地のテニスは、10月半ばからインドアになる。雪は降っていないが、外は寒過ぎるので殆どやる人はいない。インドアの施設は新しく、小さい町にしては数が多い。オムニばかりでなく、アンツーカーのコートもある。室内は温かく、半袖半ズボンで出来る。更衣室にはサウナがあり、シャワールームも綺麗だ。ジュニアの育成に熱心で、早朝からマンツーマンで練習している光景を良く見かける。ソ連時代の名残だろうか、テニスに限らずスポーツ練習には必ずプロのコーチと効率的なプログラムがセットになっており、羨ましい環境がある。

テニスコートは基本的に時間貸しで、1時間20ユーロ前後である。これを頭割りするので、例えばシングルスの場合は1時間半借りると1人15ユーロ(1600円)になってしまう。日本的な金銭感覚だと1人5000円程になるので、かなり高い遊びになる。それだけにやる方は真剣だ。

テニス相手はクラブの掲示版や紹介で見つける。ただ中々お互いが満足する相手に巡り合うまで時間が掛かる。いつぞや、「自分はプロレベルではないが、相手をしてもいい」という男から連絡があった。会ってみると全くの初心者でガッカリしたこともある。その他、テニス界の大御所が関係者にメールを出して、トーナメントを企画することもある。このリストに載るまでが大変だが、こうして知り合った人と連絡を取り合い、コートに漕ぎ着く。

Tuesday 22 November 2011

活気付くロンドン

週末、ロンドンへミュージカルを観に行った。例のライナー航空を使うと8000円程で往復できる。小さな町から行くとやはり大都会だ。


久々のロンドンは活気があった。来年にオリンピックがあるためか、2階建てバスが新しくなり、高層ビルが増えた。そしていつ行っても人種のるつぼだ。入国審査からムスリムの黒いスカーフを被った女性に「何日いるのか」と、これには思わず「貴女の方は大丈夫?」と聞くところだった。タクシーに乗ればパキスタン人の運転手、地下鉄ではアラブ、アフリカ系のみならず、ヨーロッパの少数言語も聞こえてくる。中華、インド料理も相変わらず美味い、何世代もここに住み付いている産物だ。人種が溶け合い、それでいて落ち着いた雰囲気がある。


ミュージカルは”ウィキッド(Wicked)”にした。少々分かり難かったが、緑の肌を持つ魔法使いを巡り、偏見とは何かをテーマにしているように見えた。混沌とした人種社会をコミカルに比喩し、終わってみれば拍手喝采、劇の世界はロンドン社会そのもののようだった。英国病から完治し、イギリスは実を取って生きている。

Friday 18 November 2011

国を守る言語

本屋に行くと、真新しいエストニア語の書籍が山積されている。ショッピングモールには必ず本屋があり、そのスペースも広い。この国の人口は130万人、その内50万人がロシア人なので、エストニア語を使う人は70万人程しかいない。それを考えると、一体誰が買うのかと思ってしまうことが良くある。

背景には、政府の力の入れようがあるようだ。教員資格や国籍取得などに、エストニア語の試験を義務付けていたり、エストニア人と結婚した人を対象に語学教育を施している。加えて、この国には(昔の日本の様に)書籍で棚を飾る文化がある。いつぞやのブログ「My Estonia」の中でも、田舎の家に不似合いなバルザック全集が並んでいた。長い冬を過ごすのに本は欠かせない。

ヨーロッパの国は言語を大事にしている。言語が見えない壁になって、外国文化の侵入を防ぐからだ。典型的なのはフランスで、アカデミー・フランセーズが外来語を一つ一つ仏語に置き換えている。昔、”コンピュータ”まで、わざわざ”オーディナターフ”という仏語を作っていたのに驚いたことある。ともあれ言葉を大事にする国は強い。

Thursday 17 November 2011

雪を待つローラースキー

大分寒くなり、外に出るのに帽子が欠かせない。ただ昨年は10月下旬に降った雪が、今年はまだ降らない。先日もフィンランドで予定されていたスキー大会が雪不足で中止になったり、人々は冬用のタイヤに交換したのに拍子抜けしている。

そんな中、待ち切れないのがスキーヤーである。スキーと言っても、当地は山がないためクロスカントリースキーである。シーズンになると、町の郊外に何か所かある周遊コースに出かける。10月半ばからその準備とばかり、路上を走るローラースキーが目に付き始めた。凄いスピードで突っ込んでくるので危ない思いもする。

首相のアンシップ(Ansip)氏もクロスカントリースキー選手の一人である。昨年東京に出張した際、前日に札幌で開かれた50Kmレースに参加して周囲を驚かせたことがあった。55歳にしては若く見えるが、その彼も、練習をやり過ぎて肩を痛めたらしい。

Wednesday 16 November 2011

スウェーデンの監禁事件

友人に勧められて読んだスティーグ・ラーソンの長編小説「ミレニアム(Millennium)」は、読み応えがあった。スウェーデンを舞台にしたサスペンスで、スリル感と構成の緻密さが最後まで緊張感を保った。また普段あまり接することのない、スウェーデン社会の男女関係も興味深かった。俗に言うフリーセックスとはこういう事を指すのかと変に感心したり、全体を通して伝わる男と女の信頼関係がとても心良かった。ただ自由な関係は、時として相手を傷つけるごく当たり前のことに、北欧独特の寒さも伝わってきた。

小説の中には時々人身売買の話が出てくる。本当なのかと思っていたら、先週スウェーデンで14歳の少女が1年間、アパートに監禁されていた事件が公表された。犯人は、スウェーデン人の女とセルビア人の男で、少女の父親に1000ユーロ(10万円)を払い、セルビアのベオグラードから連れて来たという。

また時期を同じくして、当地でやはり14歳の少女が失踪したニュースが報道された。市のバスセンターで目撃されたのを最後に行方が分からなくなり、警察では写真を公開して探している。一歩路地裏に入ると、小説まがいの怖い世界が待っていそうだ。

Monday 14 November 2011

猫ひろしの挑戦

お笑いの猫ひろしが、カンボジア国籍を取ってオリンピックを目指すという。中々いい所に目を付けたと思って声援している。


10年以上前にブラジルから来たロペス(呂比須)も、日本に来たからこそワールドカップに出場出来た。そもまま本国に残っていたら、多分その機会に恵まれなかっただろう。彼は現在、本国でクラブの監督をやっているという。


スコットランドで買い求めた子供向けの歴史書に、スコットランドのサムライこと、トーマス・グラバー(Thomas Glover)が載っていた。後の長崎グラバー邸の主だが、彼もそんな一人だった。故郷の港町アバディーンから仕事を求め、上海のジャージー・マセソン商会に入ったのが縁の始まりだった。折しも日本は幕末の最中、伊藤博文など多くの志士達を英国留学に送り出したり、今日のキリンビールを築くなど、日本の近代化に大きく貢献することになった。何でもやってみるまで分からない。

111111の日

先の金曜日は2011年11月11日、111111の語呂の日だった。1988年8月8日の8が続く日に偶々シンガポールに居たことがあったが、8は中国で縁起がいいと言われた。ただ結局何もなかったし、この日もそうだった、それどころか・・・・。

いつものパブに行くと、欧州サッカー予選でアイルランドからやってきたファンでごった返していた。その晩だけで2000人も来ているというので、小さな町は緑一色となった。地元の人はトラブルを警戒し早々姿を消している。私が「皆怖がって逃げちゃったよ」と云うと、「飲んで暴れるのは英国人だ。俺たちそれからスコットランド人もそうだが、楽しく飲むだけだ」と言われた。確かにアイルランドの人は陽気で楽しい。日本人だと分かると、「おじさんが日本で長年神父をやっている」、「(隣にいた男を指して)こいつの昔の奥さんは日本人だよ」、「日本人は良くお辞儀をするね」等々日本の話題で盛り上がった。

ただ試合が始まる21:45までだいぶ時間がある。「ケネディー、レーガンだけでなくオバマもアイルランド系だ」と段々話が大きくなったかと思うと、その内飲め飲めとばかり、ウォッカの一気飲みが始まった。「私は中立だ」と言っても、「そんなこと構わない」とボルテージが上がっていく。終わってみればアイルランドの大勝だった。地元はハンガリー人審判のジャッジを巡って不満が残り、私の方は久々の二日酔いとなった一夜だった。

Friday 11 November 2011

Mr.ビーンの映画

Mr.ビーンの新作映画、”Johnny English”を見に行った。007のジェームズボンドを捩ったパロディーで面白かった。

Mr.ビーンは、殆ど言葉が入らないので私の様に英語が苦手な者にはちょうどいい。独特のウィットといたずらが笑いを誘い出す。日本で云えば志村けんに近い、見ているだけで何かやってくれると思わせる天性がある。笑いのツボは国によって違うので、見ていてドキッとする場面もあった。例えばMr.ビーン扮するエージェントが、エルザべス女王を殺し屋の女と間違えてボカボカと殴るシーンがある。英国王室のブラックジョークを売りにしていると聞いてはいたが、日本的にはちょっとビックリする光景だった。

言葉が入るともっと違ってくる。日本に来て日本語が達者になった外人が、日本語でジョークを言っても殆ど面白くない。いい例がデープ・スペクターで、英語に直すと面白いのだが、彼にしてそうだ。ましてや日本人が下手な英語で受けを狙うのは至難の業だ。笑の世界は奥深い。

Thursday 10 November 2011

カルマン・キャスに続け

エストニア出身で有名な人は、何と言っても把瑠都である。ただ世界的にみると、ネーメ・ヤルヴィ(Neeme Järvi)であろう。日本フィルハーモニーの首席指揮者も努めた、世界的な指揮者だ。

最近では、ウォールストリートの抗議デモのラーソン氏がいる。エスソニア生まれのカナダ人で、例の"We are the 99% ! " と叫んで、ウォールストリートを占領する運動の仕掛け人だ。私にはちょっと目的が理解できないが、この人も日本に居たらしく、奥さんは日本人である。

そして何より有名なのは、スーパーモデルのカルマン・キャス(Carmen Kass)である。ラルフ・ローレンやクリスチャン・ディオールのモデルにもなった売れっ子だ。今週彼女に続けとばかり、当地でスーパーモデルコンテストが開かれる。優勝者には英国のエージェントとの契約が待っている。街を歩けば皆モデルに見えてしまうこの国、競争率は高そうだ。

Tuesday 8 November 2011

80歳のガール

イタリア19%、ギリシャ18%、ポルトガル17%、ユーロ危機の話でない、65歳以上の高齢者の割合である。それに対し日本は何と23%になったという。つまり約4人に1人は65歳以上の長寿国になってきた。綾小路きみまろが、「病院に入ったら帰ってきてはいけないのです!そのまま(天国に)直行して頂きたいのです」と云うギャグも、もはや冗談では無くなってきた。

日本のニュースも、震災を除けば殆ど出てこない。暫く前に珍しく日本の特集をやっていたかと思いきや、何と高齢者の万引きが増えたというテーマだった。万引きの動機も金目的ではなく、人との触れ合い欲しさと聞き、侘しい思いがした。

当地の寿命も、男70歳、女80歳に上がってきた。先日の新聞に、高齢女性のダンス教室が紹介された。この教室では80歳はまだガールと呼ばれ、入会待ちも多いという。少々危なくなってくる90歳頃まで続けるらしい。一緒に歌い踊り、観客の拍手に包まれるのがいいようだ。今は発表会に向け、”ドナウのさざ波”を練習している。

Monday 7 November 2011

マレーシアの多妻制

先日いつもの様にパブで飲んでいると、出張で来たというマレーシア人とスウェーデン人の男が入って来た。


マレーシアはイスラム教なのに、彼はビールを飲んでいる。話を聞くと「国の外ではいいのだ」と言って肩を竦めた。そう云えば日本で会ったマレーシアの人もそう言って飲んでいた。国では厳しい戒律があるのだろう。昔クアラルンプールでフランス料理をご馳走になった時、ワインの代わりにスイカジュースが出てきて閉口した。そして「自分には4人の妻がいる」という。イスラムは確か最高4人まで妻を持てるのでおかしなことではない。ただ4人というのは多分多い方だと思い、「さぞかし色々大変だろ」と聞くと、「そんなことはない」と一蹴されてしまった。

一緒に来たスウェーデン人は、横で沈黙を守って聞いている。スウェーデンと言えばフリーセックス、大分意味合いが違って伝わっているが、要はユニセックスの先進国だ。女性が性的差別から解放され、社会的に自由になっている。ベストセラーになったスティーグ・ラーソンの小説「ミレニアム」の中で、その一面を垣間見ることが出来る。彼は時々頷いては首を傾げる。自由な1人を取るか、制約の中で4人を取るか、この先はもう少しアルコールが要りそうだ。

Sunday 6 November 2011

タクシーのトラブル

海外で乗ったタクシー、不愉快な思いをした旅行者は多い思う。当地も乗る度に値段が違うので、よく争いの種になる。

先日もたった2kmを走って11ユーロだというのでひと悶着あった。通常は3分の1の4ユーロ程度である。流石おかしいと文句を付けると、運転手もがんと譲らない。「窓に値段表が貼ってあるだろ」と言うので見ると、確かにその通りだ。それでも「値段表がおかしいよ」と言うと、「それならポリスを呼ぶ」ということになった。10分程してパトカーが到着、事の経緯を話すと、「この国には50社のタクシー会社があり、それぞれ値段は違う。乗る前にそれを確認して下さい」と言う。結局タクシーが正しいと分かりお開きになった。

ただ悪いことばかりではない。先日、寒さで車のバッテリーが上がってしまったことがあった。人に聞いたら、「そんな時はタクシーの運転手に相談するといいよ」と言うので、近くのタクシーを呼んで充電したもらった。運転手は仕事そっちのけで、頭が下がった。土地の習慣に慣れるのは、まだまだ時間がかかる。

Saturday 5 November 2011

クルドの本

小島剛一著「トルコのもう一つの顔」(中公新書)は、とても痛快な本だった。随分前に出版された本だし、著者は言語学者と聞いて余り期待していなかった。一般的に、学者の書いた歴史書は史実の列挙で味気ないからだ。ところがこの本は、出だしからまるで水でも流すようにすらすら読める。言語を専門的にやっている人だけあって文章が練れているし、何と言っても閉鎖社会の内側を紹介した話が面白い。
                                                                    本書はトルコの少数民族、特にクルドの実態がテーマである。ただその研究の仕方が変わっている。例えば何か月も旅するのに際し、肩掛けバック一つという軽装で、多くは野宿である。私も若い頃に良く山で野宿をしたことがある。地面に寝るのは痛いし寒い、真っ暗な中で朝が来るのが待ち遠しく何度も目を覚ます。それを承知しているだけに、こういう旅の仕方もあるのかと改めて感心した。

クルド民族は、湾岸戦争の時に山岳地帯に逃げ生活している光景が紹介された。桁違いの生命力であった。本書の続編が出ているというので楽しみだ。

Friday 4 November 2011

スパイク一つで

先月、キリンカップで日本がベトナムと戦っていた日、ヨーロッパでは、欧州選手権予選のウエールズ対スイス、北アイルランド対エストニアが行われた。私はサッカーに関して全くの門外漢だが、世界のサッカー界は、こうして1つになって動いているのが段々分かってきた。


英国のプレミアリーグやドイツのブンデスリーガのみならず、各国にはJ1に相当するプレミアリーグがある。バルト3国では、エストニアに10、ラトビアに9、リトアニアに12のクラブがある。殆どTVに映らないので、どうやって運営しているのか分からないが、改めてサッカーのすそ野の広さを感じる。


世界で活躍する日本人も増えてきた。長友や本田といったスターばかりかと思っていたら、世界でプレーしている日本人選手は何と150人もいるという。中にはインド、ミャンマーやアルメニアなど、生活環境の厳しい国もある。当地でも2人の日本人選手が頑張っている。スパイク一つで、世界に挑戦している姿は中々頼もしい。夢はワールドカップ、ナショナルチームのメンバー入りだ。ガンバレニッポン!

Wednesday 2 November 2011

中東の嵐

この数か月、TVを点けるとリビアのニュースで埋め尽くされていた。最初はどうなる事かと思っていたが、NATOが出て来た頃から形勢が一変、後は時間の問題となり先日のガダフィ死亡で幕を閉じた。それにしても改めてアメリカの凄さを感じた。数か月前のビンラディン殺害や昔の湾岸戦争もそうだが、やると決めたら徹底的にやる国だと改めて思った。

今年はリビアだけではく、チュニジアから始まったデモが、エジプトのムラバク大統領の退陣に繋がったり、サウジアラビアやバーレーンでも似たような動きがあった。ただ中東に行ったことがないせいか、私にはどこか遠い別世界の出来事のように見えた。砂漠の中で男たちが気勢を挙げている光景は、聞いてみるまでどこの国だか区別がつかない。民主化を叫ぶ一方で、女性が全く出てこないのも変な感じがした。

数か月前、BBCがガダフィにインタビューしたことがあった。大分形勢が不利になって来た頃だったが、ガダフィは「彼方達は何も分かっていない」と端から相手にしなかった。その言葉が今でも耳に残っている。

Tuesday 1 November 2011

小さな町の盗難

先週、当地の教会でチェロの盗難があった。楽団員がちょっと目を離していた隙に盗まれたらしい。時価1千万円の高価な物だったのでちょっとした話題になった。防犯用のモニターに30-35歳のホームレスらしき男が写っていたという。ただこんなことがニュースになるくらいだから、治安はとてもいい。

大都会では、自動車の窓を割って中の荷物を盗んだり、地下鉄のスリが日常的だ。スーパーの食料品コーナーから胃袋に入れ出て行く輩もいれば、故障で助けを求めるので車を止めると、乗り逃げされたり、冗談のような話が尽きない。その点、ここでは手口に荒々しさは殆どない。小さい町なので、直ぐに捕まってしまうからかも知れない。

ただ小さな盗難はある。いい例が自転車で、置いておくと大体無くなるという。テニス仲間のA君も自転車に乗っているが片時も目を離さない。先日もテニスで体育館に行った時、自転車を更衣室まで持ち込んでいたのには驚いた。