Wednesday 4 October 2023

ジビエと小鹿物語

食の秋である。特にこの時期、フランス料理ではジビエが出て来る。イノシシ、鹿といった野生動物である。この春、友人の息子さんが仕留めた獲物を振る舞う会があった。有名なシェフが料理してくれ皆で珍味を堪能したが、後で胃が持たれてた。やはり歳を重ねると食べ慣れた寿司やそばの方がいい。

その時、鹿の肉を食べながら思い出した事があった。それはグレゴリー・ペック演じる「小鹿物語(The Yearling)」だった。小鹿を通じて子供の成長を見守る感動作である。 

 小鹿は最初は可愛いが、次第に成長するにつけ農作物を食い尽くすようになる。最後は射殺されるが、そのショックを乗り越え子供が成長する様子が素晴らしい。取り分け父親の寛容と優しさには何度見ても心を打たれる。

 その小鹿を飼うようになったのは、父親が森の中でヘビに噛まれた事がきっかけだった。彼は咄嗟に近くにいた親鹿を撃留め、その肝臓で毒を吸い出して一命を取り留めるのであった。鹿の内臓は殺菌効果があったのだ。開拓時代の人は逞しかった。 

余談だが、昔パリのアパートで野兎の子供を飼っていた事がある。ただ大きくなり過ぎて手に負えなくなった。そこで近くのブーローニュの森に放す事にした。別れを惜しんでその場を去ろうとすると、どこから現れたのか男がさっと拾い上げて持って行った。その晩は彼の胃袋の中に納まったかと思うと心が痛んだ。

よく日本人は農耕民族で西洋人は狩猟民族と言われる。身近な事だが、こうしてジビエに接するとその違いが良く分かる。

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