ずっと気になっていたUSスチールの買収が決着した。トランプが色々と渋るなら、ブレークダウンも仕方ないと思っていた矢先だった。
特に黄金株の登場にはビックリした。屋上屋を架されたようで、以来喉に小骨が刺さった感じがしている。先方の弁護士が捻り出したウルトラシーなのだろうが、つくづくアメリカ人の悪知恵には感心した。ただ確か日本では認められていないので、法的に大丈夫なのだろうか?
買収金額の2兆円と今後の投資の2兆円、日鉄がコミットした4兆円は凄い金額である。同社の売り上げが8兆円だから、改めてその額の大きさに驚かされる。又買収額はキャッシュで払わねばならない。そんな資金調達も大丈夫なのだろうか?
そして何より100%の完全子会社化の方が気になる。日鉄の経営陣にはアメリカ留学組も多いと聞くが、問題は英語である。所謂契約交渉のような1対1のバイならいいが、マルチ(大人数の議論)になるとレベルが違ってくる。
取締役会など喧々諤々の声が飛び交う中、2〜3年程度の留学英語では到底太刀打ちできないのは明らかである。特に時にはジョークやユーモアも交えて人心を掴む事も必要だ。正直で人がいいだけではマネージに限界がある。
思い出すのは、東芝のウェスティングハウス買収である。アメリカの老舗電機メーカーを大胆にも手に入れたのは良かったが、数年後に破綻して1ドルで売却、東芝もそれがきっかけになり破綻した。トップの誤った決断が、従業員や株主の財産と未来を奪ってしまった。
古くは三菱地所のロックフェラーセンター買収失敗もあった。人種の偏見も根強いし、日本人がアメリカ人を管理する最も苦手な事が、これから始まろうとしている。「鉄は国家なり」の会社だけに心配である。