Sunday, 3 August 2025

セルバンテスとレパント海戦

スペイン中部のラ・マンチャ(La Mancha)地方は、ドン・キホーテ(Don Quijote)一色だった。何処に行っても、土産物屋にはロシナンテに乗るドン・キホーテとサンチョの人形があった。著者のセルバンテスが泊まった宿も小さな博物館になっていて、マドリッドからのツアー客がそこでお茶を飲み、近くの風車群を廻っていた。

400年経っても色褪せない古典の力は凄いものがある。、英国のストラトフォード・アポン・エーボンはシェークスピア、軽井沢の堀辰雄もいたが、凡そその比ではないだろう。

セルバンテスは24歳の時にレパント海戦に参加した。結果は負傷した挙句、オスマンの捕虜になり、帰国してからも新天地アメリカへ願いも却下されて左遷になった不運な人だった。ただその失意と貧困がユーモラスな「ドン・キホーテ」を生んだというから、何が幸いするか分からない。

昨年ギリシャを廻った時、レパント海戦の舞台になったコリント湾(旧名レパント湾)を通った。もしこの一戦でスペインが破れていたら、長年頑張って来たレコンキスタも水泡に帰して、イベリア半島はまたイスラムに逆戻りしていたかも知れない。広い海峡には、本土とペロポネソス半島を繋ぐ全長で3kmもする見事な橋が架かっていた。

折角なので、その「ドン・キホーテ」を図書館で借りて読んでみた。スペイン文学の権威、牛島信明氏による新訳でとても読み易かった。風車や羊の群れに突っ込み、醜い下女を姫と慕い、カネは持たない騎士魂と宿のオヤジとのトラブルなど、今風にも通用するコミカルさがあった。ただ如何せん長編で途中で飽きが来てしまった。

ドン・キホーテと聞けば、渋谷のディスカウントショップを思い浮かべる時代である。本物に触れて少し軌道修正された。


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