トランプ関税でよく話題になるのが、リカルド(David Ricardo)の比較優位論である。比較優位性の高い産業に特化して、低い分野は他国から輸入した方がトータルで利益を得る考えである。賃金や物価が高いアメリカで、これから自国生産に舵を切るの発想はとても尋常とは思えない。
そのリカルドは古典派経済学の大御所であるが、父親はオランダから英国に渡ったユダヤ人であった。先日ポルトガルに行って分かった事だが、オランダのユダヤ人の祖先はポルトガル人だった。
レコンキスタ(イスラム排斥)が終わった15世紀のイベリア半島では、キリスト教による国家統一が始まった。そこで問題になったのがユダヤ教であった。1400年後半に異端審問所が作られ、ユダヤ教の取り締まりや隠れキリスタンの発掘が始まった。
ポルトガルもその例外ではなかったが、航海に欠かせない天文学や、金融の中枢を担うユダヤ人が抜けて国力が低下したスペインを見ていたので、最初は黙認していた。しかしスペインに遅れる事50年、その異端審問所が出来ると様子が一変し、ユダヤ人は一掃されたのである。
国を追われ、亡命先はスペインと対立していた新興国のオランダが多かった。その中の一人がリカルドの祖先であった。
今の世界経済は比較優位論が通用する程単純ではないが、赤字を保護主義で補うのは昔の話である。移民政策も(ユダヤ人を)排斥すると国力が低下した歴史に学ぶべきだ。
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