「オデッサファイル」の続編にはガッカリさせられたが、折角なので50年前の原作を読み直してみた。これで3〜4回目になるだろうか?相変わらずの濃厚さに吸い込まれた。
冒頭にリガの収容所が出て来る。ラトビアの首都リガに行った時にはそんな形跡はなかった。それもそのはず、ソ連が迫った時に取り壊してしまった。当時のカイザーバルトと呼ばれる収容所のユダヤ人は、チェコのテレジン収容所から送られてきたと言う。テレジンには何年か前に行ったので土地勘が働いた。
テレジンはプラハの北方50㎞に作られ、更に辺鄙な場所に移送すための仮置き施設だった。半分町のような風景に、まだ戦争の初期だった事もあり、アウシュビッツのような最終処理場とは随分と趣きを異にしていた。
ラトビアの西にリアパーヤという港町もある。バルチック艦隊が出港した港として有名であるが、その郊外を走ると貨車がポツンと保存されていた。囚人を運んだ家畜用の貨車であった。ただでさえも寒々しい土地で、当時を彷彿とさせる迫力があった。今回もそんな光景を思い浮かべ小説と重ね合わせた。
オデッサはナチSSの逃亡組織、ファイルはその名簿である。戦後イスラエルのモサドの追求で、アイヒマンなど南米に逃れた残党の捕獲に繋がった。
ただ小説の主人公は同じドイツ人であった。彼は偶然手に入れたユダヤ人の遺稿から、軍人だった父親が、同じドイツ将校に殺害された事実を知るのであった。その意味で物語は親殺しの復讐であった。
決め手になったのが、柏葉と剣付の騎士鉄十字勲章であった。鉄十字の叙勲は30万人と多いが、柏葉に剣をあしらった勲章になると少なかった。殺された父親はそれを付けていた事で、死亡日から犯人を特定したのであった。
因みにこの受勲者は全部で159名、日本人で唯一の受勲したのが山本五十六だった。

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