いま上映されている「モンテクリスト伯」を観に行った。最近何度目かの再読をし、十分予習をした矢先だった。しかし小説とは随分と異なる展開に、「これって違う!」を心に中で連発した。
まず冒頭のナポレオンの手紙だが、海で助けた女が持っていた。小説では船長が息を引き取る時にダンテスに手渡すので、全くの創作だった。
次にその手紙だが、手に入れた検事はそれを隠匿した。宛先がパリに住む父親だったからである。父親がナポレオン派と分かれば、王党派の彼の未来はない。それを恐れてダンテスを投獄するのだが、その大事な件が全く描かれていなかった。
ダンテスが復讐するのは、検事、銀行家、将軍の三人である。銀行家を偽情報で破綻させるのは正しかったが、あと二人の扱いが随分と違っていた。特に将軍は妻子に捨てられ、絶望の中で自ら命を絶つはずだった。しかし映画の後半では、ダンテスと剣を交えていた。これでアクション物に成り下がってしまった。
また最後は、アルベールとエデが結ばれるシーンで終わっていた。とんでもない話である。アルベールは絶望の中で家を捨て出て行くのであった。エデはもっと神秘的な女性で、ダンテスとの未来を暗示して幕を閉じる。そもそも彼女はギリシャ人なのに、フランス人女優が演じていた。間違った筋書きで、作品は二流のロマンス物になった。
昔クライブ・カッスラーの「サハラ(日本語:死の砂漠を脱出せよ)」という痛快な小説があった。これを映画化したのが大失敗で、以降カッスラーは怒って許可を出さなくなった。今回その話を思い出した。
上映が終わり、連れに「全然本とは違うよ!」と話していたら、後ろにいた女性が「そうなのよ!」と割り込んできた。全く知らない人だったが、知る人なら誰しもストレスが残ったのであった。
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