Sunday, 2 November 2025

小泉セツの物語

 NHKの朝の連続テレビ小説「ばけばけ」が始まった。まだ観てはないが好評を博しているようだ。主人公は小泉八雲の妻セツである。

小泉八雲については、以前松江にある元住居の記念館を訪れた事があった。その時は左程気に留めなかったが、昨年の夏、彼が生まれたギリシャのレフカデ(Lefkada)島を訪れてから、急に身近な人になっている。

帰ってから早速怪談シリーズを読んでみたが、中々よく書けていた。特に面白かったのが「むじな」である。ある時男が歩いていると、女がしゃがみ込んで泣いていた。「どうした?」と聞くと女が振り向き、目も鼻もないのぺらぼうだったのでビックリ、男は近くにあった蕎麦屋に飛び込んだオヤジに事情を話そうとすると、「こんな顔ですかい?」とそいつものっぺらぼうだった話である。

中学生の頃だったか、英語の教材にこの話が出て来た。MujinaやSoba seller(蕎麦屋)の英語に何かしっくり来なかった記憶がある。やはり日本の話は日本語で、今回改めて翻訳の素晴らしさも感じた。

処で彼の本名は生まれ故郷の島の名前を取って、ラフカディオ・ハーン(Kafcadio Hearn)である。島に渡るのには、回転式の浮き橋とモン・サン・ミシェルのような細い陸路を通る。島の入り口には胸像が建っていたが、美しい漁村だった。

彼の父親はアイルランド人の軍医で、駐在した時に島の娘と結婚して彼が生まれた。母親は地元のギリシャ人で、アラブの血も混じっていたという。そのコスモポリタン的な出自が、日本をして第二の郷里になったのも分る気がした。

勿論怪談などの情報源はセツだった。普段はご無沙汰している朝のテレビ小説だが、これを機会に観てみてもいいかと思っている。

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