例えばダンテスが10数年に渡って投獄されたイフ島がある。マルセイユ沖に浮かぶその島には、観光船で牢獄を見に行ける。訪れた人はダンテスとファリア神父の交流に思いを馳せるのである。そして今回もう一つ、出逢ったのはギリシャの城塞町のイオアニナ(Ioannina)であった。
ダンテス(モンテクリスト伯)の復讐劇には3人の男が登場する。その一人がフェルナンという元漁師である。彼はダンテスに無実の罪を着せた上に許嫁を奪ってしまう。そしてナポレオン戦争のドサクサに紛れて出世し、伯爵に上り詰めた。ただその陰には非道な軍歴があった。
場所はギリシャ北部のイオアニナである。土地の首領だったオスマン帝国のアリ・パシャは、15カ月に渡る抗戦の末に降伏した。ただ命は保証されたので出ていくと、司令官だったフェルナンの裏切りにあって殺害されたのである。
たまたま昨年のギリシャ旅行でその町を訪れた。迷路のような下町を抜けると、湖を望む高台にそのアリ・パシャのお墓があった。その時はまさか彼が物語の重要人物とは知る由もなかったが・・・。
ダンテスは残された娘を見つけ出し、身近に置いて復讐に備えた。そして機が熟すとパリで、娘の口からフェルナンの裏切りを告白させ、彼を破滅に導くのであった。
彼女の名前はエデ、絶世の美女としてパリの社交界でも話題になった。最後はダンテスと新たな旅立ちをする処で物語は終わるのだが、高貴でエキソチックな装いに、読者をして不思議な高揚感に誘うのであった。
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