経済学の理論に「限界効用逓減の法則」がある。「同じ財を繰り返し消費するほど、追加で得られる満足度は次第に小さくなる」消費の原理である。
よく引き合いに出されるのがビールの味である。最初の一杯に比べ、二杯目に味わう感動は少なくなる。三杯目となると更に落ち、後は惰性状態に陥る例である。
男女の仲もそうだ。最初に会った時は新鮮だが、次第にほとぼりも冷めていく。そして三年目の浮気を経て、きみまろの言う「あれから40年」の世界に入っていくのであった。
同じものを食べても、見たい映画を観ても、好きな旅行に行っても、その感動は段々薄れていく。まあ歳だから仕方ないかと諦めているが、この効用逓減の原因の一つが、変らぬ消費性向である。
例えば食べ物だが、(私の場合は)寿司やトンカツが好きなので、迷うとその店に入ってしまう。本や映画も歴史物が好きだから、決して鬼滅の刃みたいなアニメや恋愛ものは観ない。(連れ添った伴侶は仕方ないにしても)同じ事ばかり繰り返していれば、感動が逓減するのは当然であろう。
一方で「収穫逓減の法則」もある。「同じ土地に改良を加えて収穫量を増やそうとしても、その増加量は次第に少なくなる」生産側の原理である。
飲食店で味の改良をしてお客が増えても、自ずと客席は限られているので販売額は頭打ちになる。自動車会社が同じ車を売り続けても、販売数はどこかで伸びなくなる。だから生産者は消費者が飽きないように、店を改装したりモデルチェンジを繰り返すのである。
この成長の波はとても大事で、それに乗る事が唯一の抗生剤かと思っている。例えばiPhoneの使い方であるが、何年か前に覚えたLINEや、先日もAirDropなる機能を知った事は大きかった。食べ物も新しい店がオープンしたと覗いて行くと意外な発見があるものだ。
着るものはもっと大事である。高いお金を出す必要はないが、常にオシャレに気を付けて新しい服を着ると身が引き締まる。哲学者サルトル曰く、「人は他人に見られて初めて自身の存在を得る」からである。
何の事はない、オシャレをして街に出て店を廻り、企業努力の恩恵に預かればいいのである。そうすれば逓減して横ばいになっていた効用も、少しは右肩上がりになるかも知れないのである。

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