一方で自分の歩いて来た人生を振り返るのは、山の上から地上を見下ろすようで楽である。これこそ正に年寄りの特権かと思う。もう亡くなってしまったが親戚の叔父さんは晩年、家系図作りに精を出していた。「自分とは何者なのか?」、その探求は歴史好きの人には堪らなかったらしい。
学生時代にスリップする人もいる。大学受験で一発合格を勝ち得たW君は、当時の試験問題にチャレンジしたという。わざわざ国会図書館まで出かけ、入試問題をコピーして持ち帰って試してみた。半世紀を経て同じ問題に対峙し、結果は「とても無理!」と笑ってしまったという。
その話を聞いて、私もW君に肖って専門だった経済学の教科書を取り出してみた。昔書き込んだメモや下線が残っていたが、消費と投資需要、ケインズ型消費関数やハロッド・ドーマー・加速度原理など、およそ現実の世界も知らずに分かるはずもなく当時を哀れんだ。どうやって単位を取ったのか、本当に信じられない思いである。
処で(何度もこのブログで書いたが)、好きな映画に「心の旅路」がある。忘れていた記憶を辿る内に、過去の自身に出逢う感動作である。英語のタイトルはランダム・ハーベスト(Random Harvest)である。「少しずつ刈り取る」の意味かと思うが、茨の人生を振り返って、(その殆どは失敗ばかりだったが)後悔と反省を肴に楽しむ今日この頃なのである。
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