Monday 29 June 2020

持ち主が代わるパリ

フランスの老舗食材店フォーション(Fauchon)が倒産したニュースが出た。コロナの影響は深刻だと思っていたら、マドレーヌ広場の店を一軒閉じる話だった。フォーションはパリに行った人なら誰でも一度は覗きたくなる総菜屋である。ワインやチーズの品揃いも豊富で、ホテルに持ち帰り楽しむ人も多い。パリの風景が変わらないと知りでホッとした。バブル崩壊の時にも、ワインのブティックだった二コラ(NICOLAS)が倒産したニュースが出た。郊外の大型スーパーが出来て、安価で大量のボトルが出始めると経営が圧迫された。二コラはあずき色の小さな店で、アパルトマンから歩いて一本買いに来る人が対象だった。パリの街の文化でもあったのでその後どうなったかと心配していたが、今でも店が続いていた。どうやらオーナーが代わっただけのようだ。

パリ市は外国からの観光客で持っているが、泊まるホテルや買い物するデパート、スーパーも殆ど外国資本である。最近でこそ知らないが、バブル期の不動産のオーナーは殆ど中東系だった。だから人々は店を売買するのに慣れている。店の名前はブランドとして残しながら、商売を続けられるのは暖簾のお蔭であろう。昔の仕事仲間も、何人かでタバ(tabac)を買った。タバとは煙草の意味でキャフェの事である。いくらだったか知らないが、素人でも簡単にキャフェを始められるのは素晴らし事だ。

パリの人は店を閉じたり人が亡くなって遺品が出ると、オークションで処分する。オペラ座に近いオテル・ドゥルオー(Hotel Drouot)には、そのオークション会場がある。平日は毎日セリが行われ、誰でも入札に参加できる。セリは家具、宝石、絵画などのジャンル毎に行われる。午前中に下見を行い、午後にセリが始まる仕組みである。面白いのは骨董品ばかりでなく、キャフェやバーの装飾品やネオンサインなどもある。私も一度セリに参加した事がある。大きな声で新たな価格を出し、小さな油絵を手に入れた。支払いはその場でチェックを払い、あっという間に終わった。モノが動くことは人が生きている証拠である。パリの活力の源もそんな処にあるのかも知れない。

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