Sunday 3 January 2021

日露戦争とリバウの港

この年末年始は児島襄の「日露戦争」を読んでいる。約1年半の戦いを、何と文庫8冊に綴った大作である。読む方も大変だが、その緻密で精力的な取材に圧倒される。改めて児島さんは秀才だった。面白かったのは戦費調達の件である。日銀副総裁の高橋是清が10百万ポンドの起債に成功する話である。安ホテルに泊まり最初は中々相手にされなかったが、ユダヤ人シフことクーン・ローブ(Kuhn Loeb)のJacob Schiffの知遇を得て起債に漕ぎつけた。利子6%は今となっては案外低い気もするし、担保が関税だった事も意外だった。

何よりシフの動機が、抑圧されたロシア在住のユダヤ人への同胞愛だった事は興味深い。日露戦争から13年後にロシア革命が始まった。その実態は反ユダヤ主義への戦いだったと云うから、シフみたいな支援が外国から寄せられたのかも知れない。  

そもそも日露戦争が身近になったのは、今から10年程にラトビアのリエパヤと言う港町を訪れた事から始まる。旧名をリバウ(Libau)と呼ぶ大きな入り江は、ロシアのバルティック艦隊が旅順に向け出港した港であった。今では廃港されその面影もないが、残された広大な兵舎やトーチカ跡など、当時ニコライ2世が見送りに来ていた様子を彷彿とさせてくれた。バルティック艦隊は日本海海戦で日本に敗れた。もしあの一戦で日本が敗れていたら、日本は朝鮮半島も含めて赤化されソ連の属国になっていたかも知れない、そう思うとゾッとした。何よりこうして旅する自分もなかったと、その時心に刻んだ。以来、明治の先人に感謝と畏敬の念を抱いているのである。

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