Tuesday 23 February 2021

中国の強制移住

以前読んだ川島博之氏の「戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊」という本があった。氏によると、中国の人口13億人の内、都市に住めない農民戸籍(農民工)が9億人もいて、彼らが4億人の都市戸籍を支えていると言う。今の中国の繁栄は都市住民の繁栄であり、その陰には内陸に縛られた農耕民がいるようだ。ただその実態が中々分からなかったが、一昨日再放送されたNHK BS「離郷 そして~中国、史上最大の移住政策」を見ていたら生身の農耕民が登場していて、日曜の朝だと言うのについつい見入ってしまった。

ドキュメントを見た方も多いと思うが、寧夏省の回教自治区に住む農民の話であった。それはある時村に役人がやってきて、「近くの銀川市に集団移住する事になった」と言われる。新しい家には水道やヒーターも付いている夢のような話であった。農民は選択の余地がないまま移住を決断して村を出た。ところが教育・技能のない農民にとって、都会で仕事に就くには至難の業で生活は直ぐに困窮した。元農民は「本当にそれで良かったのか?」と自問するが、元の家は取り壊されて帰るに帰れない処で放送は終わった。  

共産党による移住の名目は貧困の撲滅であった。同じ回教徒のウイグル自治区でも集団移住があると聞いていたので、貧困撲滅は少数民族の土地を取得するキーワードなのだろうか?共産党員が諭す口調はソフトだが、従わなかった場合は孤立=死を意味するから実態は強制である。そのアメとムチの使い分けが共産党らしく不気味だった。移住した元農民には念願の都市戸籍が与えられた。それを受け取った人々の喜びが目に焼き付いた。普段NHKを殆ど見ないので、“料金を取るのはけしからん!“と思っているが、こんな番組なら少し許せた。

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