Sunday 18 February 2024

メリーポピンズの生地

旅をしていると意外な発見がある。先日もオーストラリアのMaryboroughという小さな町を通った時だった。市役所でトイレを借りようとすると、守衛みたいなおじさんが立っていて、「このトイレは世界一美しいトイレです!」という。確かに入ってみると、天井から壁までの美しいペインティングが施されていた。

それはメリーポピンズ(Mary Poppins)の世界だった。聞くとここはその作者のパメラ・トラバース(Pamela Travers)が生まれた町だった。まだ開拓当時の街並みが残るレトロな町の一角に、彼女の父が務めていた銀行跡が博物館になっていた。 

 ウォルト・ディズニーが作ったメリーポピンズの映画は、ジュリー・アンドリュース演じるナニー(教育係)が、銀行家の家に住み込み処から始まる。魔法で子供達を勇気付け、大人たちにも子供心を取り戻す感動作である。有名なA Spooful of SugarやChim Chim Cher-eeなどの歌も、一度聴いたら忘れられない曲である。

 しかしモデルになった銀行員の父親は、アルコール依存症で降格させられ早世し、母親もそのショックで後追いを試みるなど、家庭環境は良くなかった。そのため彼女はこの町を出て親戚の家を転々とし英国に渡る事になったのである。

そんな幼少期を乗り越えて、パメラは児童文学者として素晴らしい作品を作った。題材は父親から聞いたケルトの童話や銀行員の家庭環境で、全て父親をベースとしていたのであった。

思い出したのはアイルランドのフォークソングである。アイルランドの歴史はイングランドの長い圧政でとても暗いものがある。ところがパブで聞く民謡は、それとは裏腹に陽気でリズミカルである。この不思議は未だによく分からないが、お父さんもアイルランド系と聞いて何か共通するものを感じたのであった。

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