一方、目から鱗の人もいた。同じ新書だったが、川島博之著「戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊」はいい本だった。著者は東大の先生だが、学者の本にしては平易で自身の言葉で語っている処も魅かれた。特に専門が農業開発という地味な分野だけに、中国の農村の実情を良く踏まえていらっしゃる。自身が預かる留学生の故郷を訪ねて取材する手法も珍しいし、視点が農村なのがいい。内容は冒頭で書いているように、中国には13億人の人がいるが、実は9億人が(都市に出れない)農民という現実である。兎角我々のような外国人が接触するのは都市の人々だから、彼らの作り出した製品や数字と付き合っている。中国農民は表に出ないサイレントマジョリティーだった。当然経済格差も大きい。読んでいて、それはアメリカで云えば黒人層に似ていると思った。普段日本のビジネスマンが接触するのが白人が多いから、黒人など下層の事は殆ど知らない。
著者はその理由を中国3000年の歴史から分かり易く紐解いていた。有史以来、農民とはそう言う存在らしい。そう思うと共産主義も有りかと思えたり、仮に今の体制が代わってもこの中国は変わらない気がしてきた。本書は筆者が目の前で語っているかのようで、スッと頭に入った。学者の本と云うと兎角専門バカで取り付き難いが、久々に面白い一冊だった。
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