Tuesday 22 December 2020

悪女とカネ

ジェフリー・アーチャーのクリフトン年代記に、Lady Virginia(バージニア伯爵夫人)という女性がよく登場する。彼女は女王の縁戚で貴族の出である。ただ金癖が悪く、金欠になると毎回大胆な金策に打って出るのである。勿論相手は金持ちの男である。ただその手口は中々凝っていて、おカネへの執着は半端でないと感心する。

例えば6作目の「Cometh The Hour」では、英国貴族に憧れるアメリカ人富豪に的を絞る。彼はルイジアナ州で28番目の資産家である。彼と一晩を共にした翌朝、「昨夜ベットでプロポーズされた」と(自分で用意した)指輪を見せる。ただそれだけではカネが取れないと分かると、妊娠を装って慰謝料と子供の養育費をせしめる戦略に出る。それもルイジアナ州で拓かれた彼の結婚式にわざわざ英国から参列、新郎に度肝を抜かせ先手を打つ。実際の子供は執事夫妻から引き取り我が子として育て、まさにカネのためなら手段を選ばない女性である。また7作目の「This Was A Man」では、夫人に先立たれた老貴族に的を絞る。新聞でとある葬式に彼が参列する事を知ると自分も同席し、懇意になると首尾よく後妻の座を得る。レストランで彼が払ったチェックにゼロを二つ付けて懐に入れる辺りや、伯爵が不在の時に相続品の鑑定を始めるなど、頭の中はカネだけだった。最後は貴族条項(aristocrats clause)で、血筋以外の承継が出来ない事が分かり失敗してしまう。男も男、分かっていて良くまあこんな女と付き合うとなあ!と思うが、どこの世界も成り行きがあるから分からない。

 世の中に悪女と呼ばれる女性は多い。ただ尾上縫みたいな大物を除けば、中島みゆきの歌「悪女」のように所詮は可愛い人が多い気がする。その点、アングロサクソンになるとちょっとスケールが違ってくる。

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