中国や香港で当局が監視カメラを使ってデモ隊を鎮圧するのを見ていると、ジョージ・オーウェルの未来小説「1984」を思い出す年配者は多いだろう。有名な「ビックブラザーがあなたを見ている(Big Brother Is Watching You)」はそれを端的に物語り、3つのフレーズ、「戦争は平和(War is Peace)」「自由は隷属(Freedom is Slavery)」「無知は力(Ignorance is Strength)」も今に十分通じている。
この言葉が意味するところは、戦争は国民の結束を高め、爆弾が降って来ない限りは平和を実感出来るし、戦争が続いている事すら忘れる時がある。戦争は経済的には富を生み出す訳ではないから再分配もない。これにより、労働者は本来受け取れるはずの富が得られないので恒久的に下層に据え置かれる。人はビックブラザーの言う通りに行動している限りは自由が保障されるし、ビックブラザーは完全で間違わないから決して疑ってはならない・・・と。一見今的には逆説的なメッセージとも思えるが、気が付けば民主国家にも当てはまるから驚く。
書かれたのが1948年で今から73年前、凄い先見である。当時のソ連を想定していたと言われるが、最近読み返してみると、その赤裸々な描写はオーウェルが生まれ育ったインドのカースト社会が影響していたのではないかと?思えるようになってきた。インドには一度しか行った事はないが、空港の通路で川の字になって寝る家族や片腕がない人など、その貧困は東南アジアの比ではなかった。何より人々は生まれた時から代々続く職業に就く宿命が待っていて、その運命から逃れる事が出来ないと聞いた。汚水を代々掃除する男を見た時、インドの真の姿を知ったのである。
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