Tuesday 24 May 2011

ノーベルの遺言書

昔、「恐怖の報酬」(原題:La Salaire de la peur)という映画があった。僅かの振動でも爆発するニトルグリセリンを運ぶトラック運転手の物語だ。運転手は無事荷物を届けるが、死の恐怖から解放された喜びからの帰り道、崖から落ちて死んでしまうというストーリーである。Alfred Nobelはこのニトルグリセリンを粘土状にして衝撃でも爆発しないダイナマイトを発明、一躍ロックフェラーと並ぶ大富豪になった。折しも第1次世界大戦前、兵器として各国から大きな引き合いがあった。


Nobelは天涯独身、孤独な事業家だった。ダイナマイト工場が世界20か国にあったため、この行き来に多くの時間を費やした、秘書も連れずに。プライベートでも唯一思いを寄せた花売り娘にも裏切られたという。そんな中、死の前年遺言書(写真)を書いた。遺言書は遺産運用は安全な有価証券で行うこと、分野毎の賞の選考機関まで細かく指定した。弁護士を通さなかったことが、解釈を巡ってその後の混乱を招いたようだ。ともあれ、それが今日のノーベル賞になっている。


ストックホルムのノーベル博物館に行ってみたが、並み居る受賞者の業績はあまりに難解過ぎて、伝わるものが少なかった。物理、化学だけでなく身近な経済、文学でもそうだった。ただスーチー女史やマンデラなどの平和賞は分かり易った。時代を経て、個人の意思がスウェーデンの国家戦略に置き換わっているのかも知れない。賞金は1人10百万クローネ(約13百万円)、基金が現在400億円とも500億円とも言われているので、何%で廻っている?・・・・など下世話なことばかり考えた。それにしても、100年以上も利子だけで賞金を賄っているのは大したものだ。


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