Friday 10 January 2020

奇襲は騙し討ち

カルロス・ゴーンの会見を見ていると、色々考えさせられる事が多い。彼も「今回の逮捕劇はパールハーバーだった」みたいな事を言っていたが、日産と検察が周到に用意した奇襲作戦だった。どうして日産は、彼の在職中に不正を正す事をしなかったのだろうか?海外への送金を預かるのは一般の社員である。経理部長や課長など、多くの社員が関与していたにも拘わらず防ごうとはしなかった。それを差し置いて検察に委ねるのは、ゴーンならずとも納得の行かない点である。奇襲は極めて日本的で、騙し討ち(Deception)と感じるのが普通だ。

もう一つは復讐のやり方だ。今回ゴーン被告が名指ししたのは、西川社長や豊田取締役など日産トップの数名だった。事前にはもっと多くの名前が出て来るかと思っていたが、意外と少なかった。思い出したのは、佐藤優の「国家の罠、外務省のラスプーチンと呼ばれて」である。佐藤氏は北方領土の機材納入を巡り、鈴木宗男氏に連座する形で投獄された。その時の検察とのやり取りを手記を本にし、当時はベストセラーになった。多くの担当官が実名で登場し、密室の尋問がリアルに再現されていたので面白かったが、驚異的な記憶力でネチネチと検察に報復していた。それに対し今回のゴーンの演説はどちらかと言うとカラッとしていて、被告の取り扱いを巡る人権に訴えていた。どちらが人の心に響くのか?これからの展開が興味深い。

日本人は英語に弱いし、議論するのが苦手だ。彼を国内に連れ戻せば有利になるだろうが、外国にいられては所詮勝目はない気がしてしまう。

No comments: