Monday 24 February 2020

Tom Traubert's Blues

オーストラリアを代表する歌と言えば、何といってもワルティング・マチルダ(Waltzing Matilda)だろう。軽快なメロディーとは裏腹に、空腹から羊を食べた男が警察に追われて池に身を投じる悲しい歌である。人々が第二の国歌で歌うのは、孤独で新天地を求めた祖先を思うからだろう。歌に出て来るマチルダは野宿の毛布の名前で、何とも郷愁を誘うのである。

そのマチルダをフレーズにした歌があった。たまたま昨年、そのワルティング・マチルダをYoutubeで聞いていると、ロッド・スチュワート(Rod Stewart)が歌う別のマチルダに出会った。聞いていると本来の曲よりもっと長くて深みがあり、不思議に魅かれていった。以来オーストラリアに来ると、毎晩飲みながら聞く曲になっている。広大な大地と、そこに生きた孤独な男と重ね合わせるからだろうか?或いはロッド・スチュワートの迫力ある歌声のためか?それは分からない。

歌詞にはそのWaltzing Matildaが、「放浪の旅」の意味で使われて何度も出て来る。気になったので調べてみたら、歌は正しくは「Tom Traubert's Blues」という名前で、オーストラリアとは関係ない事も分かった。Tom Traubertとは生涯牢屋で過ごした無名の男の名前らしく、飲み仲間が彼の非情を偲んで作った歌のようだ。それでも歌詞には、「I'm tired of all these soldiers here, No one speaks English and Everything's broken(ここの兵士にうんざりで 誰も英語を話さない・・・)」とあるので、場所はオーストラリアかと思う節もあって、擦り切れて傷ついて(Wasted and wounded)で始まる歌詞は(支離滅裂な処も多いが)聞く度に何故か深く心に響くのである。原住民のアボリジニはアルコールを受け付けないらしい。ただそのしわの深さがこの曲とマッチして、私とオーストラリアを繋ぐ大事な歌になっている。
https://www.youtube.com/watch?v=NDDrak6Rnwo&t=25s


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