Thursday 25 November 2021

ウィンザーノット

昔ある日本の女性ファッション家が、安倍元首相の着こなしを嘆いていた。例えばネクタイ、安倍さんは横シマのレジメンタルタイを好んでしていたが、海外の公の場では御法度という。特に右肩下がりは駄目だという。レジメンタルタイは元々英国の連隊で使われていた柄で、右肩上がりの英国式がフォーマルと言う。安倍さんのは右肩下がりのアメリカ式だった。その時はお気に入りのブルックスブラザーズが亜流かと知り、複雑な気持ちになったりしたが・・・。 

その人は外国出張時のローファー靴や、背広の袖から出ないシャツもみっともない部類に入ると言っていた。服装には礼儀が伴うのは今更語る術もないが、一国の代表となるとやはり細かな所まで配慮した方がいいと思った。

新しく就任した岸田首相も、そのレジメンタルタイを好んでよく身に付けている。青と白のストライブが多いが、よく見るストライブは右肩上がりなので、英国式のフォーマルである。やはり宏池会の正統派を意識しての演出なのだろうか。 

ネクタイは結び方も重要である。普通は縦結びが多いが、三角形を作るウィンザーノットという結び方もある。個人的には喉が詰まる感じがするので好きでないが、イアン・フレミングの古い小説「ロシアから愛をこめて(From Russia, With Love)」を読んでいたら、ジェームズ・ボンドも酷評していた。それはソ連の殺し屋がしていたファッションだったが、彼は「(ウィンザーノットは)下品な男のよくやる結び方」と貶していた。確かにボンドがやっているのを見た事がない。その殺し屋を「三流パブリックスクールから戦争に飛び込んだ野戦憲兵タイプ」と品定めしていた。 

もうネクタイをする機会もめっきり減ってきたから、結び方も忘れそうだ。思えば長い間、首を絞める習慣によく耐えたと感心してしまう。ただ相変わらずセンスのいい着こなしをする人を見ると好感が持てる。中でもネクタイの趣味は人柄を如実に表すだけに、男の重要なポイントだと思っている。

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