Sunday 23 December 2018

ウエルベックの服従

黄色いベスト(Gilets jaunes)で盛り上がるフランス、マクロン大統領はどうなるのだろう?思い返せば就任直後、戦没式に参加した少年から「マニュ」と呼ばれた事があった。親しみを込めたつもりが、彼は「こういう場所では大統領と呼びなさい」と少年に諭した。当時は微笑ましい光景だったが、今から思うと人心が離散する人柄だったのかも知れない、そんな気がして来た。

そんな現代のフランス社会を抉る小説、ミシェル・ウエルベック著「服従(原題:Soumission)」を薦められて読んでみた。ソルボンヌ大学の教授の日常を通し、イスラム化するフランス社会を深堀した本だった。所々昔の全共闘みたいに、何を言っているのか分からない部分も多かったが、自身の私生活も織り混ぜた自然な流れが快かった。タイトルの服従は、「O嬢の物語」から来ている。どこまで真面目でふざけているのか分からな処だが、佐藤優氏が絶賛しているのは、随所に出て来るフランス式ラムールと、それに相反するイスラムのコントラストが楽しいかったのに違いない、そんな事を確信した。それにしても近い将来、国民戦線と並んでフランスイスラム党が第一党になる、と言うから大変な事だ。

本の中には、教授が訪れる懐かしい場所が沢山出て来た。その一つがペリゴール地方のロカマドール(Rocamadour)、直角に聳え立つ岩山に教会が建つ、ミシュラン3つ星のスポットである。それからポアティエ(Poitiers)も、スペイン、サンチャゴへの巡礼地として紹介されている。あれ?巡礼の出発点はベズレー(Vézelay)じゃなかったの?そう思って調べてみると、巡礼のルートはいくつかある事が分かった。ともあれフランス人は外来文化に寛容で、上手く取り入れながら生きて行く国民性がある。どんな形でイスラムを内製化するのか、そんな事を考える切っ掛けになった。

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