Sunday 16 December 2018

ホテルムーリスの物語

そのリッツホテルから歩いて5分程の処に、やはり5つ星のホテル・ムーリス(最近はLe Meurice)がある。リボリ通りに面し、道路を挟んでルーブル美術館やチュエルリー公園がある観光の中心地である。そのムーリスには、戦時中ドイツの司令部が置かれていた。映画「パリは燃えているか?」に出て来るが、司令官のコルティッツ(Dietrich von Choltitz)が最後に降伏して終わる場所でもある。随分前になるが、その記念すべきロビーで、解放日の8月25日にお茶を飲んだ事があった。まるで歴史に立ち合ったようで、痛く感動した記憶がある。

暫く前に上映された「パリよ、永遠に(原題:Diplomatie)」も、そのコルティッツと、説得に当たったスウェーデン領事との駆け引きを題材にした映画だった。先の「パリは燃えているか?」の領事役のオーソン・ウェルズに比べ、今回の方がより外交官らしかった。面白かったのは、ホテルに隠された抜け道があり、領事はそこから侵入する。元はナポレオン三世が愛人との密会で使ったもので、中々歴史を感じさせる仕掛けだった。その秘密を担保に説得に成功し、パリは破壊を免れた。

戦争で町が全壊した都市は多い。東京もそうだが、ワルシャワ、ベルリン、ドレスデンなど、今では一部が再生されているものの、昔を取り戻すにはやはり限界がある。その点、パリは全て本物が残る数少ない都市である。改めてコルティッツで良かった!そんな気持ちになる一作だった。

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