Monday 24 December 2018

天皇と忠恕

昨日は平成最後の天皇誕生日だった。皇居には多くの参拝があり、テレビは色々な特集を組んでいた。見ていて、改めて一国民として時代の節目を感じた。中でも陛下が、「昭和が戦争の時代だったのに比べ、平成は戦争が無かった」と語っていたのは、戦争を知らない者には意外な印象だったり、「象徴としての旅の終わり」の件は、ご立派な人徳、人間性が伝わってきた。陛下で良かった、そんな気持ちになった。

そして、陛下の教育と結婚に深く携わった小泉信三博士の話も感慨深かった。改めて博士の存在無くしてその後の陛下もなかった、と思った。国民に寄り添う象徴天皇とは何か、博士はその心構えを「忠恕」という言葉で伝えたという。初めて聞く単語だったが、中々いい言葉だ。昔の人は語彙が豊かだった。また皇太子時代の教育に、博士は福沢諭吉の「帝室論」を使ったというエピソードも紹介していた。早速、本棚から埃を被った福沢諭吉全集を取り出し読んでみた。それは30頁程の短い本で、旧漢字で読み辛く、正直良く分からなかった。ただ「皇室は中立を保つ事が大切」みたいなニュアンスは伝わってきた。それを知っていたかどうか分からないが、先の昭和天皇が、「戦争の反省として皇室が政治関与し過ぎた」と語っていたのと重なった。

博士はまた、陛下のご結婚でも尽力され、女子大から新聞社まで精力的に動かれたようだ。そのエネルギー源は何だったのか?ご子息を戦争で亡くされた事と関係している気がした。著書「海軍主計大尉小泉信吉」は凄い本で、凡人の愛情で到底書ける代物ではない。塾長として送り出した学徒も多く戦死し、我が子も失い、それでも気丈に戦後を生き、残る時間を国体に捧げられた。その陛下も退位する。ひとつの時代の終わりを感じ得ない。

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