Wednesday 16 October 2019

Heads You Win

ジェフリー・アーチャーのもう一つの新作「Heads You Win」を読んでみた。先の「Nothing Ventured」と同じ作者とは思えない文体で、こちらはとても読み易い英語だった。いつぞや凝ったクライブ・カスラー(Crive Cussler)もそうだったが、途中から共同執筆が始まると本来の醍醐味が薄れてしまったので、雅かそんな事がないかと少し心配になった。

物語はソ連から西側に亡命した親子を描いている。主人公はSashaと言う名前で英国に、もう一人はAlexという名前でアメリカで行く設定で、一人二役の構成を同時並行で追っていた。どちらも行った国に同化し議員と銀行家として成功するのだが、最後は母国に錦を飾ろうとして帰国した時に、飛行機事故で亡くなってしまうオチだった。読んでいて、ロンドンとNYが交互に入れ替わる構成に少し頭が混乱してしまったが、相変わらずのサクセスストーリーは快かった。

ジェフリー・アーチャーの特徴は、おカネへの執着と議員生活が頻繁に出て来る事である。おカネという意味で代表的なのは「百万ドルを取り返せ(Not Less Than Penny, Not More Than Penny)」だが、このHeads You Winでも投資に纏わる箇所や母親のレストラン経営でその片鱗が出ていた。またSashaは大学を出て労働党の議員に当選し宿敵と争う辺りも、クリフトン年代記の件と重なり、作者の拘りが伝わってきた。ただソ連から亡命する件は、確かクリフトン年代記でも使われていたから、ネタが重なっている感じがした。タイトルのHeads You Winは、直訳すれば「表が出ればあなたの勝ち」だが、元々はHeads I win, tailes you lose(どっちに転んでも損しない) を捩ったフレーズのようだ。SashaでもAlexでも成功した、と言いたかったのだろうか!兎も角、原書は読み終えるとほっとする。

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