Sunday 23 August 2020

大鵬とロシア革命

宮脇淳子さんの語り口には、なるほどと思う箇所がある。例えば歴史を古代、中世、近代などの段階で捉えるのが一般的だが、それはマルクス史観の影響だと言う。資本主義から社会主義を経て共産主義に至る論理はその典型で、分かり易いが実際は途切れない一本線である。いい例が平成から令和になった時、年号が変っただけで生活は連続していた。歴史をXX時代で整理するのは便利だが、一方で個別で普遍の現実を見損なうことになる。自身も永年この思考に馴らされてきたと反省した。

もう一つは日本人の自虐史観である。戦後の左翼の影響だろうか、未だに明治以降の歴史を否定する処から入るのが定石である。ただ丹念に事象を追うと、当時の日本人の判断は今と左程変わらない事に気付く。これは勇気のいる作業だが、出来ると過去と現在が繋がって元気が出て来る。

「満洲国の真実」の中に大鵬の話が出て来た。第一次大戦の末期にロシア革命が勃発し、赤白に分かれた内戦が始まった。日本はシベリア出兵で貢献するのだが、反革命派のロシア人が日本に亡命してきたので受け入れた。その中の一人が相撲の大鵬親子だったり、野球のスタルヒン、チョコレートのモロゾフだった。大鵬の父はコサック騎兵、日本人の母親と二人で船で日本を目指した。母親の船酔いが激しく、途中の稚内で下船したのが幸いした。船はその後襲撃を受けて沈没したという。大鵬は成長して相撲界を代表する力士になった。彼の数奇な運命を知り、当時がグッと身近になった。

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