Friday 2 July 2021

数奇な犬の人生

一カ月ほど前に福島県のブリーダーから連絡があり、子犬が生まれたというので見に行った。10年前の震災から初めての福島訪問である。生まれた子犬は先日死んだ愛犬の孫に当たる。一度に父方と母方の両方が生まれ、残った二匹の中から母方の方に決めた。死んだ愛犬の兄弟とその甥、つまり今回生まれた子犬の親にも巡り会った。確かに良く似ていて、持参した愛犬の写真と見比べながら、故人ならぬ故犬を語り合った。

ブリーダーさんも10年前に手放した犬の写真を見ながら、しみじみと「この子もいい人生を送った事が分かりました」と言ってくれた。話している内に、愛犬がどうして我が家にやって来たのか、その謎も解けてきた。愛犬が生まれたのは東北大震災の直後だった。当時の福島は混乱を来たし、福島産というだけで風評が立った。子犬も例外ではなく、そのため全国のブリーダーに手分けして引き取ってもらったという。その中の一匹が群馬のブリーダーを介して我が家に来た訳で、引き取り手が無かったのだろうかタダ同然だった。それにしても福島の山奥から群馬を経て東京に、そして又こうして福島に戻ってくる数奇な運命に、久々に人様のご縁を感じたのである。 

帰り道、お腹が空いたので須賀川という町で食事する事にした。偶然入ったのは「かまや食堂」というラーメン屋だったが、この醤油ベースの味が素晴らしく大感動した。そう言えば、前の晩に飲んだ廣戸川という酒もここが産地であった。喜多方や白河など福島県のラーメンは有名だが、その質の高さに改めて地方の食文化の奥深さにも触れたのであった。

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