Sunday 22 July 2018

人間臨終図鑑

偉人の最後ばかりを集めた、山田風太郎の「人間臨終図鑑」があった。こんな本を読むような歳になったのかと、改めて思ってしまう。人の一生は棺桶の蓋が閉まるまで分からない、と言うが確かにそうだ。
 
歴史に名を残す人でも、晩年は病に苛まれる人は多かった。美食家の北大路廬山人は、魚の腐敗した臓物が原因で肝臓ジストマで死んだ。食を極めた過ぎて体を壊したようだ。ベートーベンも耳が聞こえなくなってからアルコール依存症になった。死因は肝硬炎だった。同じ作曲家のスメタナも聾者でこちらは梅毒だった。梅毒になると精神異常をきたし、今は無き人に手紙を書くらしい。また女性関係が縺れたまま世を去る人もいた。彫刻家のロダンは77歳の時に長年連れ添った妻と晴れて結婚した。しかしその一方で長年愛人だったクロデールは捨てられ精神病院に入った。そのクロデールの弟が駐日大使だったと知って身近な話になった。ヨハン・シュトラウスも晩年に愛人を作り、奥さんはそれを苦に自殺した。あの軽やかなワルツの陰にいろいろあった。そして川端康成、芥川龍之介、太宰治、そしてヘミングウェイは自ら命を絶った。そんな中で、元海軍大将の井上成美の清廉潔白な晩年は印象的だった。本では「孤高、瀟殺(しょうさつ)」という言葉が使われていた。

そもそも人の晩年だけ切り出して、横比較すること自体、凡そ乱暴な話である。しかしその終わり方で一生が評価されることも事実である。生きるのも大変だが、どう死ぬかも大事だ。

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