Wednesday 25 July 2018

アメリカへの流刑

長崎のグラバー邸こと、トーマス・グラバーの生涯は中々波乱に富んで興味が尽きない。幕末の志士たちを英国に送り出し、明治維新の陰の立役者になった。しかし2代目は戦艦武蔵の建造を巡ってスパイ容疑が掛けられ、終戦を前に自害してしまう。以前スコットランドを旅した時、アバディーンにある彼の生家を訪れてから、特に身近な人になっている。

そのアバディーンの町だが、ケン・フォレットの「自由の地を求めて(原題:A Place Called Freedom)」にも出て来た。時代はトーマス・グラバーの100年前なので、より厳しい階級社会である。物語は近くの炭鉱で働く若者が、労働争議の罪に問われアメリカに流刑になる話である。行った先はバージニアの農場だが、何とオーナーは以前働いていたスコットランドの貴族の所有地であった。最後は貴族の娘と新天地を求めて西の未開の地に向かう。トーマス・グラバーも職を求めてアバディーンを去ったが、似たよう姿に改めて当時のスコットランドの荒涼さが伝わってくる。

物語はこれから始まる所で終わってしまった感があるのはちょっと残念だが、ケン・フォレットは何を読んでも楽しめる作家である。主人公をマックと呼んでいたが、MacではなくMack McAshのスペルであったり、当時の文書偽造は縛り首の刑だったり、娼婦と言ってもとても人間的だったり、死刑に次ぐ刑がアメリカへの流刑だったり、当時ヴァージニアから西は未だ未踏の地であったり、発見も多かった。

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