Thursday 17 February 2022

恐妻家の開き直り

学生の頃、アメリカ大陸をヒッチハイクで一周した事があった。氷河で有名なカナダのグレーシャー国立公園に行った時に、バンに乗る大学の先生に拾ってもらった。幸いその人も一人旅だったので、湖畔のキャンプを一緒にすることになった。

キャンプファイアを囲んで話すうちに、彼は「こうして自由に旅しているのは、私が恐妻家だからです」と言う。その時は恐妻家が何たるか知る由もなかったが、英語でhenpecked husbandと呼ぶのを覚えた。直訳すれば雌鶏に突かれる夫、つまり尻に惹かれる夫であった。

そんな恐妻家が長年の鬱積から解放され、開き直る瞬間は実に爽快である。自由を取り戻した男の姿は、第三者から見ていても共感を呼ぶ。フレデリック・フォーサイスの短編「帝王(The Emperor)」は、そんなテーマを扱った作品であった。

物語は長年、妻の愚痴と脅しに悩まされ続ける銀行の支店長の話であった。彼はある時、悪妻を伴って休暇でモーリシャスに出かけた。そこで友人に誘われフィッシングに行くのであったが、何と長時間の死闘の末に、帝王と呼ばれる地元でも有名なカジキを釣り上げたのであった。しかもその大魚を逃がしやるという懐の深さもあった。その快挙と慈悲に人々は拍手を送り、彼は勇気と自信を取り戻したのであった。陸に上がった時には彼は別人になっていて、「何その恰好?」と詰る妻に三行半を突き付けたのであった。 

そう言えば、昔はよくカラオケで歌った持ち歌の一つがオフコースだった。中でも良く歌ったのが「眠れぬ夜」である。たとえ君が目の前でひざまづいて全てを、忘れて欲しいと涙流しても、僕は君の処には二度とは帰らない。あれが愛の日々ならもういらない・・・の歌詞が好きだった。

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