Sunday 5 June 2022

ビゴーの風刺画

明治の外国人画家として有名なのは、ジョルジュ・ビゴーだと思っていた。在日は17年になり風刺画を通して明治を描いたフランス人である。日本人女性とも結婚したので、日本社会の洞察も深かった。随分前になるが、清水勲氏の「ビゴーが見た明治ニッポン」を通じて、彼の観察眼に感心した記憶がある。 

 例えば男女の仲、事を急ごうとする男と逢引から人目を避ける女、果てて疲れた女ともう一戦を嗾ける男などの描写、又下駄や簪の泥棒も、一瞬を捉えて漫画にするセンスに長けていた。勿論政治の風刺も多かった。

男の顔に共通するのは出っ歯と吊り目である。昔から外人が描く日本人は背が低く、丸眼鏡を掛けてカメラをぶら下げる特徴があったが、この頃から歯並びと細い目は気になっていたようだ。
それにしても、彼の風刺画はどれもコミカルである。ロートレックのタッチにも似ているし、思い出すのは暫く前にパリで銃撃されたシャルリー・エプドである。ムハンマドを冒涜したのがイスラムの逆鱗に触れたという。そのシャルリーのタッチもやはり滑稽で心を掴まれたが、フランス人特有のエスプリにはつい頬が緩んでしまう。

 府中美術館の作品の中にビゴーの作品は一点あった。他の作品の多くは英国人画家だったので、ちょっと異端であった。やはり風刺画は絵画のジャンルではなかったのかも知れない。

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