Thursday, 30 October 2025

ルーブル美術館の強盗

 先週ルーブル美術館に強盗が入った。犯人はマリー・テレーズの首飾りなど9点を奪って逃げた。被害額は88百万ユーロ(155億円)というから大変な額である。

BBCによると「盗難品は既に分解された」という。だから犯人が捕まっても、原物を取り戻すは難しいと言う。本当に大事な宝石は、フランス中央銀行の地下26mの金庫に移しているらしいが、これから一般展示の仕方も少し変わるかも知れない。

尤もルーブル自体が盗難・略奪品で埋め尽くされているから、同情にも限りがある。有名なミロのビーナスやサモトラケのニケも、ギリシャから持ち帰っている。もしこれが長崎の対馬列島で盗まれた仏像のように、犯人が被害国の関係者だったら話が拗れるかも知れない。

処でパリ郊外のクリニャンクール(Clignancourt)に大きな骨董市がある。高価なアンティックからブロカントと呼ばれるガラクタまで、多くの店が軒を連ねていて、一日居ても飽きない場所である。その市は、別名泥棒市とも呼ばれている。

パリでは泥棒が多いから、いつも「これって盗難品じゃないか?」と疑っている。商品の仕入れは、オペラ座に近いドゥルオー(Drouot)通りにある競売場で行われる。毎日ジャンル別のセリが行われ、中には遺留品を一括出展するケースもある。

誰でも参加できるので、私も何回か手を挙げてみた事がある。落とすと直ぐにその場で支払いを済ませてモノを受け取れるので、とても簡単だ。

その骨董市は蚤の市(marche aux puces)と呼ばれている。正に読んで字の如しである。日本で定着している呼び方も、フランスが発祥のようだ。

Wednesday, 22 October 2025

モンテ・クリスト伯の復讐劇

そのサルコジ氏の収監の際に、持ち込んだ本が話題になっている。許された三冊の内、一冊がアレキサンダー・デュマの「モンテ・クリスト伯」だったという。本書は長編で文庫7冊にもなるが、何度読んでも飽きない古典である。確か皇太子様(今の天皇陛下)も昔、同じような事をおしゃっておられた。

物語はフランス革命を背景に、ぬれ衣を着せられダンテスの復讐劇である。孤島の刑務所から脱獄する件もあるので、今回もそれと重ねる人もいたが、流石にそれはないにしても、やはり「これか!」と思った。

復讐劇は洋の東西を問わず痛快である。シドニー・シェルダンの「ゲームの達人」や、日本なら差し詰め「忠臣蔵」であろう。特に日本の場合は、無念を自らの命を賭けて晴らす処が凄い。

処で最近では、トランプ大統領の復讐劇が話題になっている。嘗ての議事堂襲撃で自身を追い込んだのFBIの検察官や長官や、側近だったボルトン補佐官などへの報復に出ている。物凄い執念を感じるが、権力を盾にしているのであまり快くない。

そういう事で秋の夜長、サルコジ氏に肖って「モンテ・クリスト伯」をまた読んでみる事にした。来月はその映画も日本で公開されるようで楽しみだ。

Saturday, 18 October 2025

サルコジ元大統領の収監

大相撲のロンドン場所が披かれている。連日満員だそうで、力士を囲んでの記念撮影の盛り上がりが伝わって来る。ただこれは日本の報道で、本当に受け入れられているのか、よく分からない。

昔大相撲のパリ公演もあった。1995年10月だったが、フランスの核実験に反対した日本への腹いせに、化粧まわしが入ったシャルル・ドゴールの空港倉庫に放火される事件があった。相撲は日本の象徴だけに政治的なターゲットにもなり易い。今回は無事に終わってくれればいいが・・・。

処でひと昔前までは、「油で固めたポニーテール」と呼ばれたちょんまげと、フンドシ姿の裸男は低く見られた。ちょんまげは岩倉具視の欧州使節団で嘲笑されたので、アンシャンレジームの象徴でバッサリ切ってしまった。未だに温泉や銭湯でも、裸を他人と共有するのを恥ずかしがるのが欧州人である。

余談になるが、バブルの頃に日本の会社はヨーロッパにゴルフ場を作った。シャワールームの中央には、当然大きな風呂が備え付けられた。ただその国の文化に浸ってくると、日本人でも不思議に恥ずかしい気持ちになって入れなかった記憶がある。

必ずしも快く思っていなかったヒトの一人がサルコジ元大統領であった。彼は親日家のシラクさんから跡を継ぐと、それまで定番だったフランス国大統領杯を廃止してしまった。シラクさんは愛人が日本にいたとの噂が絶えなかったので、その当てつけにしても、あれはショックだった。

そのサルコジ氏が先週収監された。何やらリビアのガダフィ大佐からの多額の贈賄を得たとかで、フランスの元大統領としてはペタン氏に次いで二人目とか。ペタン元大統領はドイツの傀儡政権のお飾りで仕方ないにしても、これはとても不名誉な事である。サルコジ氏は昔から化粧品のロレアルのオーナー女性からの多額の資金提供も問題になっていたので、伏線があったのかも知れない。

Tuesday, 14 October 2025

川崎のストーカー事件

暫く前だが、川崎市でストーカーによって若い女性が殺害される事件があった。女性は事前に警察に何度か相談していたが、真面に警察では取り合わなかったという。流石に事件後、「捜査は不適切だった」のコメントが出されたが、時すでに遅しである。

ところで最近、近所で枝が折られる事件が発生した。4軒の家が被害に逢った。いつもは静かな町内だが、この時ばかりは奥さん達が集まり、「誰が何のためにやったのでしょう?」と大騒ぎになった。

早速「警察に報告しましょう!」になり、大挙して最寄りの警察署に押しかけた。ところが事情を話すると、「それは偶然ぶつかって折れてしまったかも知れません」、「ビデオの映像がないと、捜査する訳には行きません」、「区役所に相談して防犯カメラ設置を頼んだらどうでしょう」と言う。極めて消極的な対応で、一同肩透かしにあった気分になった。

結局各々の家で防犯カメラを設置する事で、今後に備える事にした。そこで思い出したのが先の川崎市の事件だった。きっとその女性も、こんな感じで遇らわれたのだろうと・・・。

警察が忙しいのも分かる。いちいち苦情が寄せられるたびに捜査本部を置くのも大変だ。ただ市民からすると、だからといって頼みになるのは警察を置いて他にいない。場合によっては命にも関わる。頼みにしていただけに今回の無力感は大きかった。

Wednesday, 8 October 2025

入試問題にチャレンジ

歳を取ってくると容姿は衰え、病気やお金の心配も募る。誰でも「歳は取りたくないなあ!」の気持ちになる。これからの人生もまだまだ登り坂で、それも坂は益々きつくなるから大変だ。

一方で自分の歩いて来た人生を振り返るのは、山の上から地上を見下ろすようで楽である。これこそ正に年寄りの特権かと思う。もう亡くなってしまったが親戚の叔父さんは晩年、家系図作りに精を出していた。「自分とは何者なのか?」、その探求は歴史好きの人には堪らなかったらしい。

学生時代にスリップする人もいる。大学受験で一発合格を勝ち得たW君は、当時の試験問題にチャレンジしたという。わざわざ国会図書館まで出かけ、入試問題をコピーして持ち帰って試してみた。半世紀を経て同じ問題に対峙し、結果は「とても無理!」と笑ってしまったという。

その話を聞いて、私もW君に肖って専門だった経済学の教科書を取り出してみた。昔書き込んだメモや下線が残っていたが、消費と投資需要、ケインズ型消費関数やハロッド・ドーマー・加速度原理など、およそ現実の世界も知らずに分かるはずもなく当時を哀れんだ。どうやって単位を取ったのか、本当に信じられない思いである。

処で(何度もこのブログで書いたが)、好きな映画に「心の旅路」がある。忘れていた記憶を辿る内に、過去の自身に出逢う感動作である。英語のタイトルはランダム・ハーベスト(Random Harvest)である。「少しずつ刈り取る」の意味かと思うが、茨の人生を振り返って、(その殆どは失敗ばかりだったが)後悔と反省を肴に楽しむ今日この頃なのである。