Friday 3 May 2013

ラスコーの世界遺産


世界遺産に登録されれば、観光資源となって収入も増える。しかし一方で環境も破壊される。飛騨高山の白川郷は村中がテーマパークのようだった。対岸でバスを降り吊り橋を徒歩で渡るのはいいが、民家の庭先まで観光客が行き来していた。駐車場の大きなトイレビルとライトアップを見ると、静かで鄙びた村が一変のは明らかだった。





そうした心配を先取りしたのは、「ラスコー(Lascaux)の洞窟」だ。紀元前15,000年の洞窟壁画として、フランスのピレネー地方にある世界遺産である。随分前から近くに観光用のレプリカを作って人々を受け入れている。観光客は偽物と分かっていても、辿り着いた達成感で結構満足している。ピラミッドのような大きくて頑丈な遺跡だったらいいが、これは賢い選択だった。一方で、規制が緩い所もある。マルタ島の地下墓地、ハル・サフリエニ(Hal Saflieni)は未だに誰でも入ることが出来る。BC3000年の世界最古の地下墓、勿論世界遺産である。寺院地下に作られた埋葬所には、数多くのベット状の穴がくり抜かれていて、発掘された時は7000体が寝ていたという。ただ場所柄、行く人は少ないので辛うじて保護されている。

最近はこうした環境の変化を懸念して、世界遺産の登録を地元の人が拒否するケースもある。以前本ブログ(縦笛の音色)で紹介したアイルランドのクロンマックノイズ(Clonmacnoise)がそうだ。ミシュランの3つ星になっているので多くの人が訪れるが、然したる標識が全くないので単独で辿り着くのが大変な場所である。9世紀のカソリック集落だったが、バイキングやイングランドに襲われ、村中が廃墟と化した場所である。ハイクロスと呼ばれる墓の十字架だけが、当時の面影を残している。場所は海に面した小さな村の一角、自動車がすれ違うのも難儀する細い道の終点にある。UNESCOのサイトでは仮登録リストに載ったままであるが、故人が囁いているのかも知れない。



 

 

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