Friday 10 May 2013

ジム・トンプソンの絹と糸

タイと西洋文化の接点は、オリエンタルホテルとジム・トンプソンだ。オリエンタルホテルは、永年Institutional Investor誌で世界最高のお墨付きを得ていた。そしてタイシルクのスカーフ、室内装飾のジム・トンプソンは、鮮やかなデザインと高級感あるが絹製品で世界を魅了した。どちらも蒸し暑いタイを、西洋人好みにした。取り分けジム・トンプソン製品は、タイを代表する土産品の代名詞で、これなら誰からも感謝される一品だ。
 
そのジム・トンプソン氏、タイに居付いた育ちのいいアメリカ人だった。タイシルクの良さをいち早く発見し、戦後会社を設立、ブレークのきっかけは映画「王様と私」だった。1956年の作、主役はユル・ブリンナーでシャムの王様役を演じ、装飾を手掛けたのがジム・トンプソンだった。ジム・トンプソン氏はその後マレーシアの森で失踪を遂げた。それがまたアジアの神秘と重なり、未だに謎に包まれている。
 
一方俳優ユル・ブリンンーはウラジオストックに生まれ、アメリカで「荒野の7人」などの映画のスターになった。しかし彼の母親はユダヤ系ロシア人、迫害されシベリアまで逃げてきたと何かの本で読んだことがある。彼がジプシーの世界ロマ初代会長だったとは知らなかったが、その生い立ちと無関係ではないようだ。一本の絹の糸が、ロシアのユダヤ人迫害を経てアメリカのスターを生み、タイで実を結んだ。思えば奇妙な巡り合わせだが、土産物のショールを見ると、不思議な縁を感じるのだ。

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