Friday 19 May 2017

誰もが孤高の人

仕事仲間のIさんが最近山に凝り出した。最初はやはり奥多摩である。月曜日になると「三頭山と御岳に行ってきました」と報告がある。そして、「いやー!山はいいですね!!」と地図を出して、歩いたコースを解説してくれる。聞いていてそれはとても楽しいひと時である。
そんなIさんだが、初心者ということもあって中々一人では行けない。幸い身近の友人が連れて行ってくれる。ただ心の何処かで、折角の休日まで仕事仲間と一緒したくない気持ちもある。元来我関せずの人だから、日増しにそのジレンマは募るようだ。そんなある日、新田次郎の山岳小説「孤高の人」を紹介してあげた。

「孤高の人」は読んで字の如く、単独行の話である。主人公の名前は加藤文太郎と言って、天来の健脚だった。いつも一人でスタスタと、物凄いスピードで日本の尾根を歩いた。ところがある日、滅多にないペアー登山があった。文太郎は普段のペースが乱され、最後は命を落としてしまう。それは山に登った事がある人なら分かり易い心理である。Iさんは池上正太郎のファンだったから、その気持ちが少し分かるようだ。彼はいつか「山は一人で登りたい!」と思い始めている。リスクもあるかも知れないが、折角下界をおさらばしたのなら、それは当然の境地だ。

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