Wednesday 30 August 2017

東大コンプレックス

暫く前は吉村昭氏に凝っていた。探偵みたいな緻密な取材から、予想もしなかった事実が浮かんできて、それを物語化にする凄い人だと思った。その吉村氏だが、学歴は開成を経て学習院大中退だった。本の中にも体が悪かったので思うように行かなかったことが書いてあった。ただ学習院大には一番の成績で入学したと、とあるエッセーの中で書いていた。

その時、「ここまで有名になった人が、どうしてそんな事に拘るのだろう?」と不思議に思えた。しかし最近、旧知のKさんと飲んだ時にも同じような事を聞かされた。Kさんは慶大を出たビジネスエリートで大変な成功者だが、東大に落ちたらしい。でも最近になって「都立高校には一番で入った」と言い出した。受験をしたことがない者にとって、そんな事はどうでもいいことだったが、70歳を超えた今、何故そんな自慢話をし始めたのか、これも理解できなかった。ひょっとして、晩年を迎えると自身の生きた証が欲しくなるのかも知れない。

所詮、東大に入ってもそのコンプレックスが続く人は山ほど見てきた。会社に入った時、マンツーマンは東大の法学部を出たIさんだった。Iさんは開口一番、「僕は公務員試験の順位がXX番だったから、この会社に入りました・・・」と言う。聞いている内に、「だったら俺はどうなるの?」と逃げたくなった記憶がある。そんな誰もが不幸な気持ちで生きている社会を、改めて考えさせられた。

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