Friday 12 October 2018

ジェフリー・アーチャーの短編集

暫く前に丸善に行ったら、ジェフリー・アーチャーの最新本があった。あの数年続いたクリフトン年代記の後に何が出るのだろう?と思っていたが、それは短編集であった。しかも発売されてもう半年以上経っていたから、必ずしも新しくなかった。タイトルは「Tell Tale」で、”密告”と訳すのだろうか?、ともあれ早速読んでみた。

最初の告解(Confession)という短編は、ナチ政権下のフランスを舞台にしていた。銀行家、病院経営者、市長、大学の学長の4人が主役である。あらすじは、ある時ドイツ将校の乗った列車がレジスタンスによって爆破され、当時の慣行で4人が報復の対象になった。彼らは死を覚悟すると、司祭に告白を始め、遺書も残した。話を始めると、4人のエリートは過去に患者の殺人、ユダヤ人の密告、同僚の交通事故などを犯していたという。華麗な人生の裏には、いろいろ影の部分があるものだった。ただ最後にオチがあって、事故では犠牲者が出なかったため、本人達の懺悔は徒労に終わってしまう・・・、そんなウィットがとてもアーチャーらしかった。

それにしても、人は死に直面すると、自身の罪の意識に苛まれるようだ。生きている時も大変だが、その後の天国という住処に入りたいからだ。次の作品は、「オーベール・シュール・オワーズの風景(View of Auvers-sur-Oise)」であるから、あのゴッホやコローの印象派が活躍した舞台である。英国的な品の良さと、フランスの柔らかな景色が相まって、今からワクワクしている。

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