Saturday 21 December 2019

チャウシスクの最後

今月はルーマニア革命30周年だという。今から30年前の1989年12月25日に、大統領チャウシスク夫妻が処刑された。一時はヘリで逃亡を図ったが、捕まって裁判に掛けられ即刻銃殺された。その光景は今でも映像で公開されているから生々しい。サダム・フセインの時もそうだったが、独裁者の末路はあっけないものだ。

革命の引き金になったのは、ソ連の崩壊と国内の食料不足だった。西側からの債務返済を優先するあまり、日常の食料まで外貨獲得の対象にしてしまった。そのツケが国民の我慢を超えた訳だが、そんな時に作ったのが「国民の館」という巨大な大統領府だった。3年前にブカレストを訪れた時に、その建物に寄ってみた。ただでさえも街並みは、旧社会主義国特有の寒々しいビルがとても気味悪い。多分装飾を施していないためだろうが、その「国民の館」も例外ではなかった。当時はアメリカのペンタゴンに次ぐ世界で2番目の規模を誇り、建設費も現在のお金に換算すると4000億円以上もしたという。そもそもチャウシスクが建設の着想を得たのが、北朝鮮のピョンヤンにある労働党本部訪問だった。当時両国の関係は近かったので、その処刑が今でも金一家のトラウマになっている話は有名である。

ビルには3000の部屋があり、多くの観光客が訪れていた。大理石で出来た壁と床は、歩くと天井に木魂する仕組みになっていた。独裁者がそこで手を叩くと、反響で訪問者を威圧する効果もあったとガイドが話していた。今から思えば馬鹿げたとしか思えないが、その空虚さが何とも言えないルーマニアのイメージと重なっている。ひょんな事で、暑い中車を走らせた日々を思い出した。

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