Saturday 20 March 2021

ドン・キホーテの善意

犬が好きなので、時々ペットショップを覗くことがある。子犬がいじらしく眠っているのは見ているだけで楽しいし、指でも出すと甘噛みするから可愛い。ただ子犬は1週間ごとでショップを巡業するらしい。買い手が付くまで彼方此方回ると聞き、商品だと分かると今更ながら哀れになる。そんな中、生後8カ月の大きな犬がいた。値札を見るとタダみたいな値段だった。きっと引き取り手がいないまま大きくなってしまったのだろう。この先どうなるのだろう?「誰も出て来ないなら俺が引き取ってやろうか?」そんな気持ちになってきた。

それから何日かして今度は回転すし屋に行った。最近では個別注文出来るので、必ずしも寿司レーンから取る必要もない。目の前を通り過ぎる皿は食欲を駆り立てるデモ用なのか、時々手を出す人もいるが売れ行きは余り良くない。そんな事を考えながら見ていると、同じ皿が2回3回と目の前を通り過ぎていく。鮮度がどんどん落ちていき、時間が経つほど売れないのが伝わってくる。これも先の犬ではないが気の毒になってきて、「だったら俺が喰ってやるか!」と、つい手が出てしまうのである。 

そんな正義感は凡そドン・キホーテなのに、現実に直面しないと中々気が付かない。海外を歩いていると時々「金を恵んでくれ!」と寄ってくる男がいる。しつこいので小銭を渡すと「1ユーロコインにしてくれ」と更なる要求に代わる。その時初めて相手は乞食と言う職業だった事に気が付き、善意が打ち砕かれるのである。また女性にも親切を施し過ぎると良からぬ誤解を生むから怖い。昔勤めていた職場で田舎から出来てきた若奥さんがいた。あれこれ都会の観光スポットなどを教えてあげると、その人が辞める時に「あの時は優しくしてくれて」と言われた。これには流石ドキッとした。

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