Sunday 25 August 2013

グレンコーの末裔

フォート・ウィリアムズ(Fort Williams)の町は読んで字の如く、昔はイングランドの駐屯地であった。その関係で昔、近くのグレンコー(Glencoe)の谷ではスコットランド史上に残る大きな事件があった。2年前にそれを知らずに通り過ぎてしまったので、後悔していた。今回は朝早く行っては見たものの、深い霧に包まれていた。
グレンコーは雄大な谷に囲まれた緑の宝庫である。今では野生の動植物が生息する場所としてトレッキングに多くの人が訪れる。しかし一方で、血生臭い歴史のスポットでもある。1692213日、厳冬の最中、村の住民38名がイングランド兵に虐殺された。年末までにスコットランド人がイングランドに忠誠の著名をする指令が出ていたが、頭領のマクドナルドが山を降りるのに時間が掛ったためである。着いた時は担当官が休みで、著名がまた遅れたのも不運だった。虐殺はその報復であった。未だに引き摺っているのは、兵の駐留が何日も続き、村中がハイランド流儀に沿って温かい食事と住居を提供したにも拘わらず、事件はある日突然起きたことだった。

今回訪れて面白いことを発見した。それはその時辛くも生き延びたマクドナルドの末裔の話だった。彼の子孫は200年後の1838年にアメリカに渡り、ハドソン湾株式会社に就職した。そしてインディアンの女性と結婚し12人の子供を儲けた。ただ時はカスター将軍率いる騎兵隊とインディアンの戦いの最中、多くのインディアンが殺されるのを見てきた。親子共々インディアンと結婚、当時の状況をスコットランドと重ねたという。現在モンタナ州のグレーシャー国立公園の湖は、その名を取ってマクドナルド湖というらしい。スコットランド民謡が哀愁に包まれているのは、この事件があるからだ。

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