そのランブイエの森には、沢山の乗馬クラブがある。今から思えば夢のような体験だったが、週末はその中の一つのクラブに通って馬の乗り方を教わった。先生は30代後半の美男子で、擦り切れたジーンズ姿で熱心に指導してくれた。フランス製の乗馬ブーツとズボンに身を包み、一通り室内での基礎レッスンが終わると、場外に連れて行ってくれた。森の中だから邪魔するものもなく、優雅な散策を楽しんだ。
その乗馬クラブは、特に名門でもなかったが、とても綺麗に掃除されていて気持ちが良かった。厩舎や馬具は勿論、馬の手入れもピカピカだった。それは素人から見てもかなり力が入っているのが分かった。思えばフランス人の綺麗好きの一端だったかも知れない。パリのレストランやキャフェが美しいのは、毎日主人が窓ガラスやワイングラスを、長い時間を掛け磨いているからである。
フランス乗馬界で、その優雅さの頂点に立つのは、シャンティ(Chantilly)の大厩舎(Grandes Ecuries)である。シャルルドゴール空港の近くなので、時間つぶしに訪れる観光客も多い。凱旋門レースの競馬場や、ミシュラン三ツ星のお城があり、それは優雅なスポットである。その馬場に隣接した厩舎では、今でも馬のショーをやっている。訪れる人は馬の演技も沙流事ながら、ナポレオン時代の馬具と建物の方に魅了されてしまう。その美的センスから、エルメスのブランドが生まれたのが容易に理解出来る。
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