最近は傷害を起こしても、まず加害者の責任遂行能力を検証する。医学が発達し過ぎて、立派な病名が付けば免責される事も多いと聞く。これは兼ねがね何とも腑に落ちないし、被害者の立場を考えると猶更である。
思い出すのは、シドニー・シェルダンの小説「Tell Me Your Dreams(貴女の夢を教えて)」である。物語はアシュレーという美しい女性の傍で、殺人事件が連続する処から始まる。そんな彼女の不安から、ある晩刑事が付き添うが、翌朝その彼まで死体で発見された。やがて精神医が、彼女が多重人格障害(MPD:Multiple Personality Disorder)の犯人であることを突き止めた。
彼女は夜になるとアレットという狂暴な別人格に変身し、事件を起こしたのであった。ところが裁判ではそのMPDが認められ、彼女は無罪になり療養に入るのであった。本の末尾には、MPDの支援組織の一覧まで載せられていて、著者も加害者に寄り添う姿勢が見られた。
シドニー・シェルダンの小説は、「ゲームの達人(Master of the Game)」が有名だが、女の魅力と怖さをスリリングに描いたという点からは、この本が一番だと思っている。最後に医者が「貴女の夢を教えて下さい」と聞くと、彼女は「普通の女になりたい」と応えるが、何とも複雑な気持ちになった。
それにしても昔は狼男やジキルとハイドなどもいたが、決して許されるハズもなかった。時代は変わった。
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