Friday, 29 May 2026

水俣病と漁師の話

暫く前に、病院の待合室で順番待ちをしていた時だった。目の前に新しい新聞があったので手にしてみた。それは朝日新聞だった。普段はめったに読まないし、慰安婦前後から教条的なタッチが肌に合わないから久しぶりだった。


その日は、水俣病の特集だった。多くの写真入りで、半世紀前に起きた事件を振り返り、未だに多くの患者が大変な日々を送っている様子を紹介していた。自分の中では既に過去のものになっていただけに、現実から目を背けていた罪悪感も湧いて来た。

その中に、ある漁師一家の話があった。大黒柱だった漁師は随分前に亡くなったが、その死因は特定されなかった。しかし家族は暫く前から、その症状が水俣病に似ていると気付いていた。ただそうは思っても、長い間それを口外する事はなかったという。

何故なら、その漁師一家は漁で生活していたからである。もしもひょっとして、水銀が入っていた魚を売っていた事が分れば、村では生きていけなくなる。彼は家族を守ったのかもしれない。

公害の怖さは、魚を食べた被害者がいる一方で、本来は同じ被害者なのに、魚を取った漁師を加害者にしてしまう。それまでは平和に暮らしていた村が、滅茶苦茶になった様子が伝わってきた。

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