ただ晩年は認知症を患った。いつからか、聞いてもいないのに自分史を滔々と話し始めた。「おかしいな?」と思って周りの人に聞くと、やはり痴呆が始まったという。ただ倶楽部の人は昔から知っている人ばかりだから、奥さんが朝連れてきて放していても安心だった。
驚いたのは、頭がおかしくなってもテニスのスコアだけはちゃんと数えられるのだった。「昨日のことは忘れても、昔の事はよく覚えている」と同じで、変に勇気付けられた記憶がある。
そんな彼を思い出したのが、今村翔吾の「海を破る者」だった。それは河野水軍の話で、鎌倉時代に伊予国(今の愛媛県)を拠点にした河野道有の話だった。中でも元寇の時の活躍を凄まじかった。そして(本当かどうか分からないが)あの河野さんと関係しているのではないか?と思った。
やはり俱楽部には村上さんという人もいた。彼も随分と前に亡くなってしまったが、こちらは列記とした村上水軍の末裔だった。風貌も如何にも海賊らしかった。
元寇は神風もあったが、もしも負けていれば今の日本はなかったかも知れない。時代劇の一冊に、救世主の末裔だった二人の故人を思い出した。

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