Sunday 3 July 2011

社会主義とサマーハウス

ソ連解体の前夜、ゴルバチョフが監禁された守旧派のクーデターがあった。結局、エリティンの尽力でクーデターは失敗に終ったが、ゴルバチョフが拘束されたのがクリミア半島の別荘であった。それにしても、富の所有を禁じたはずの社会主義と別荘はどうも結びつかない。

この国の東、ロシア国境にナルバ(Narva)という町がある。住民の多くはロシア人で、近くのオイルシェール掘削に従事している。かつては「バルトの真珠」と呼ばれた町も、第2次大戦末期には、ソ連軍の爆撃で跡形も無くなってしまった町だ。そこにまたロシア人が住んでいるのは、何とも皮肉としか思えない。つくづく戦争は空しい。ナルバはまた1704年の北方戦争で、スウェーデンがロシアを破った地としても有名である。カール12世率いる1万のスウェーデン軍が、4万のロシア軍を破った戦いだ。今でもその城跡が残されている。

近くにナルバヨエソ(Narva-Joessu)という、旧ソ連時代の別荘地があるというので行ってみた。よく区画整理された森の中に、古いサマーハウス(別荘)が点在し、軽井沢に似ていた。森を抜けるとバルト海の白浜がどこまでも続き、夏の休暇を過ごすには素晴らしい所であった。ところがよく見ると空き家が多い。地元の人に聞くと、ソ連の解体で所有者が国に帰ってしまったらしい。セントぺテルスブルグ(Saint-Petersburg)まで150kmなので、昔は週末に共産党幹部などが通っていたのだろうか。社会主義と聞くと今でも怖い感じがするが、ここだけは人間味がした。

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